生産コストなどの上昇分を農産物価格に適切に反映するための仕組み作りを国が進めています。どんな課題があるのでしょうか。
Q 仕組みはどうやって作っていくの?
A 国は、生産から消費までの関係者が一堂に会する協議会を昨年8月に設け、検討を続けています。政府が今国会に提出した食料・農業・農村基本法の改正案では、食料の価格形成で「持続的な供給に要する合理的な費用」を考慮するとしました。消費者に届くまでの流れが簡素であればどこでどんな費用がかかっているか分かりやすいので、まずは牛乳と豆腐・納豆で仕組み作りを進めています。
実際のコストを明らかにするための調査を今後予定しています。品目ごとに製造や小売りといった各段階での取引価格などのデータを集めます。値上げなどの交渉の際に参照できる「コスト指標」の作成も検討するとしています。

Q 全部のコストを価格に乗せられるの?
A 単純にかかったコストを積み上げていけば、消費者が買いづらい価格となり、消費が減ってしまう懸念があります。消費者に値上げを理解してもらうことが前提となります。コストの開示はそのためにも必要ですが、企業秘密に当たるデータもあり、収集方法も課題の一つです。実効性のある制度とするため、関係者でどう折り合いを付けていくかが課題となっています。
Q 農家は苦しいのになんで価格は上がらないんだろう。
A 協議会では、農産物や食品の取引について①特売品として扱われるなど納入価格を低く抑えられやすい②価格交渉の時期が決まっており機動的に行えない③各段階での売り手側の立場が弱い──という大きく三つの課題があると整理しています。仕組み作りでは、これらの課題への対応策も検討します。
Q 皆が納得できるようにするのが難しいね。
A 協議会では、適正な価格形成の仕組みの必要性や、取引上の課題の認識などでは一致し、少しずつ合意形成が進んでいます。岸田文雄首相も国会審議で、食料の価格形成で「法制化も視野に検討していく」と表明しています。一方で、具体的な仕組みや取りまとめなどの時期は依然として見えず、時間がかかりそうです。