食料危機が見直しの契機に
基本法見直しは、制定から20年が経過する中での農業情勢の変化に加え、コロナ禍で食料や農業資材の安定確保への危機感が高まったことが背景にあります。さらにウクライナ危機により情勢が厳しさを増し、検討が加速しました。
22年2月24日
自民、食料安全保障の検討委発足
輸入依存度高い資材の安定確保が焦点とし、現行の対策も幅広く検証するとした。
22年2月25日
農水省も検討チーム立ち上げ
同省幹部で構成。基本法に基づく政策を広く検証するとした。
22年5月19日
自民、食料安保提言まとめる
新たに「食料安保予算」確保を要請、農村基本法の検証・見直しも提起。秋から本格的に議論するよう求めた。
22年5月30日
森山氏、基本法改正「24年通常国会で」
資材安定確保や地域政策の充実、環境との調和などの観点に言及。
22年6月21日
農水省、食料安保リスク検証まとめる
肥料不足や価格高騰はほとんどの品目で「重要なリスク」に。労働力不足も、野菜や果実、畜産物などで「重要なリスク」と評価。
22年9月9日
首相、基本法見直しを指示
政府の食料安保を巡る本部で「法改正を見据え、総合的な検証を行い、見直しを進めてほしい」と明言。
農水省・政府が具体的検討を開始
農水省が審議会での検討を始めました。政府も基本方針を設け、法改正に向けた準備を進めました。
22年9月29日
農政審で検討に着手
農産物価格の低迷が担い手不足につながっているとの指摘が続出。「安保」強化のため、同法改正により適正な価格形成がなされる環境を整えるべきとの声も。
23年6月2日
食料安全保障を巡る政府指針決定
平時からの国内生産増大や不測時の体制整備を進めるとした。岸田首相は法制度の見直しや予算、税制を含む施策の具体化を指示。
23年9月11日
農政審が見直しの最終とりまとめ
「国民一人一人の食料安全保障の確立」を提起。生産コスト上昇を踏まえ、適正取引の仕組み作りを求めた。
24年2月27日
基本法改正案を閣議決定
食料安保の確保を基本理念に位置付けた。価格形成支援、資材高騰対策も盛り込む。
国会審議入り 与野党は対立
国会審議では野党の提案により法案の一部修正がありました。
24年3月26日
「重要広範議案」として審議入り
岸田首相は、価格形成において恒常的なコストが考慮されるべきと強調。仕組みの法制化も視野に検討するとした。
24年4月18日
衆院農水委で可決 維新修正案を反映
多収品種の導入促進を追記した一方、立民などの修正案は否決。食料価格形成の制度具体化を政府に求める付帯決議も採択した。
24年4月26日
参院審議 首相「直接支払い」にも意欲
直接支払い制度を含め、必要な施策を講じ、農業の持続的発展を後押しすると表明。生産コストに配慮した価格形成の法制化にも重ねて意欲を示した。
価格転嫁、最新の情勢は
24年5月10日
政府・与党、来年にも法制化へ
自民・森山氏は基本計画始動までの法制化に意欲。水田政策・直払い見直しにも言及した。
24年5月9日
JAグループも早期法制化訴え
生産コストを反映した適正な価格形成を求めた。共同利用施設の整備支援の充実や、将来的に安定運営できる水田政策の具体化なども要請した。
24年5月
本紙モニター調査では7割が「期待」
最も多い67・2%が「適正な価格形成」に期待と回答。再生産可能な価格実現へ法制化が急がれる。
日本農業のこれまでとこれから
連載企画でもっと深く読む
食料・農業・農村基本法改正案が参院で審議入りした。国会審議が折り返し地点を過ぎた中、衆院農林水産委員会などでの議論を振り返りながら、改正内容と論点を解説する。
食料・農業・農村基本法の制定から四半世紀。日本農業はどこまで来て、どこへ向かうのか。改正に際し、現場から報告する。