農水省は19日、中山間地域等直接支払制度の第三者委員会を開き、8月に公表していた2020年度から5年間の第5期対策の最終評価を修正することを決めた。除雪や買い物支援など生活支援に対する同省の集落機能強化加算廃止の方針を巡り、委員と同省の同加算の評価が対立したことを受けた異例の措置。全面的に生活支援をすることが難しいとした同省の説明に、委員は「制度の大きな方向転換である」として、委員の総意として最終評価の修正を求めた。
委員会では、冒頭、同省が同加算の廃止を議論を経ずに決めた対応を謝罪した。図司直也委員長は「加算に対してマイナスの評価はなかった」とし、再検討の場が遅れたことなども厳しく指摘した。
同省は①生活支援が目的になっている②運営上の問題がある③地域運営組織と連携している協定は一部――などとして、加算が協定組織の強化や農業生産の継続につながったと言えないとの評価を示した。その上で、財政の問題もあり、同制度で「生活支援を前面に出した支援の継続が難しい」とした。
同省の姿勢に対し、委員は「唐突に他の組織との連携が示された」「地域運営組織との連携はハードルがある」「ここまで問題を整理しているのであれば、運用改善で対応できる」などと同省が示したほぼ全ての同加算の問題点に否定的見解を示した。課題や評価は、同加算を否定するために後付けで作成された説明であり、「極めて不誠実」との指摘も出た。
生活支援の加算が農業生産に結び付かないとした同省の説明に対し、複数の委員が「根拠がなく評価としてはふさわしくない」「制度の根幹に関わる」「集落をしっかり支えることが農業維持につながるというのは委員と農水省の共通認識だった」などと異議を訴えた。
議論は同省側と委員の意見が終始対立、紛糾した。同省によると、最終評価をどう修正するかなどは今後委員と調整し検討するという。
(尾原浩子)