特価で1袋49円
今週、東京都内の食品スーパーでは、千切りキャベツが1袋(120グラム)49円(税別)と、通常の半値で売られていた。店内広告(PОP)には「野菜が高騰中 そんな時は加工野菜ご活用ください」の言葉が並ぶ。
隣の野菜売り場では、キャベツが高値を付けていた。「最近は1玉498円。高過ぎて売りにくく、半玉売りが主体だ」と青果バイヤー。同じキャベツでも、素材と加工品で価格差が際立つ。
キャベツの卸値になる日農平均価格(各地区大手7卸のデータを集計)を見ると、11月(23日まで)は平年比2・3倍に高騰している。夏の高温による品薄に加え、カット野菜を巡る需給バランスも一因とされる。
「相場が上がると、価格が変わらないカット野菜が割安で売れる。契約産地からの調達では足りないカット業者が採算度外視で市場調達に走り、相場がつり上がる」(東京の青果卸)構図がある。
買う側も理解を
カット野菜は、時短ニーズに応える簡便性に加え、価格の安定性で市場を広げてきた。しかし、「物価の優等生」として値頃感が消費者に定着。他の食品の価格が軒並み上昇する中でも、カット野菜の値上げに対する小売りの抵抗感は根強い。
「千切りキャベツは“99円の壁”がある」──。カット野菜大手・旭物産(水戸市)の林正太郎社長は、値上げの難しさをこんな言葉で表す。一方で、特売で売り込むため「出せるだけ出して」と要望が届く。「作柄が厳しい以上、限界がある。応えようと無理するほど産地に負担を強いてしまうし、われわれも利益が出ない」状況だ。
岡山県でキャベツを生産する農業生産法人エーアンドエスの大平貴之社長は、「12月に入るまで品薄は続く」とみている。カット野菜の価格について、「買う側の理解も必要。ここまで相場が跳ね上がると、何かしら反映がないと農家や加工業者が持たない」と危惧する。
(橋本陽平)