[論説]若手職員の早期離職 誰もが働きやすい場に
厚生労働省の調査によると、大卒新規就職者の3年以内の離職率は35%。就職氷河期の1990年代初頭には3割を下回っていたが、2000年代以降は、おおむね30~35%で推移する。平均で3人に1人が、3年以内に退職していることになる。
34歳までの若手で、勤続1年未満で会社を辞めた主な理由を同省が調査したところ、「人間関係が良くなかった」が最も多かった。勤務時間や休日などの「労働条件」と答えた割合も高いが、それよりも人間関係が上位にくることに着目したい。これを逆に捉えれば、人間関係が良好な職場であれば、労働条件に多少の不満があっても、長く働いてもらえる可能性がある。
JAの場合を考えてみると、職場内のチームワークが重要なのはもちろん、組合員や准組合員、利用者との対応が不可欠であり、職場内外の人と協力して、仕事をこなしていくことが求められる。新採用職員が、組合員を訪問した際、うまくコミュニケーションが取れず、悩みを抱えてしまうこともあるだろう。まずは職場の同僚や先輩、上司が、そうした悩みを抱えた職員がいないか気を配り、普段から積極的に声をかける習慣をつくろう。まずはあいさつから心がけたい。
農業法人などの生産現場では、限られたメンバーの中での人間関係に悩むケースがあるかもしれない。そんな時は外部の研修やJA青年部、女性部などへの参加を促すなど、外のつながりが支えになることもある。職場を越えた交流機会を広げることが解決の糸口になるだろう。
目指すべきは、誰にとっても働きやすい職場づくりだ。注目したいのは、多様性(ダイバーシティ)・公平性(エクイティ)・包摂性(インクルージョン)を意味する英単語の頭文字を取った「DEI」。性別や年齢、国籍などに関係なく、あらゆる人が活躍できる社会にしようという考え方だが、トランプ米大統領が、DEIを否定する大統領令に署名したことでニュースとなった。
一方、日本は男女間格差の解消は道半ばで、多様性への理解は乏しい。今後、少子化で人材確保の難しさは一層深刻化する。多様性を認め、誰にとっても働きやすい職場をつくることは若手に限らず、職員の離職を防ぎ、持続可能な組織への一歩となる。