自分が作っていることもお米が好きな理由の一つです。俳優業を始めてから10代、20代と駆け抜けてきて、自分が俳優業に疲れていた時、家族からの勧めがあり、新潟県内で父の友人の稲作を手伝い始めました。
田植えと言っても、苗箱の洗浄からトラクターの運転まで、いろいろな作業があるんですよね。農家さんたちは、私にできる仕事を切り分けて教えてくれて、できるようになると少し作業を増やす、といったふうに寄り添ってくれます。輪に入って一緒に農業をすることが楽しくて、大きなプロジェクトに入っているみたいです。
職人のように、一人で最初から最後まで作業できれば、かっこいいと思います。でも、異業種から入ってきた私は、できることも少なくて、まずは苗箱を洗うプロになることから始めた形なんですよね。今後、農業に関わってくれる人を増やすという意味では、作業の細分化がメリットになるんじゃないかなと思っています。
家族の体調不良やコロナ禍で、手伝いたくても新潟に行けなかった時に、続けたくても続けられないことがあると気付きました。じゃあ続けられなかった場合、農業はどうなるんだろうかと危機感を抱いて、自分一人ではできないし、どうすればいいかなと考えた結果、起業という選択肢を取りました。農園でエディブルフラワーやハーブの栽培、魚の養殖をしています。
農業をしたことがない私にも作業を任せてくれたことが、いろいろな人が農業に携われる農福連携を目指す原点かもしれません。エディブルフラワーを育てるには、すごく細かい作業が必要で、障害者の方々は上手な人が多いです。高齢者、障害者、女性といった枠組みではなく、一人一人ができることにフォーカスした仕事づくりの方法が、農福連携だと思います。

なんで私は今こんなに農業をしているのかなと思うと、やっぱり子どもの頃の楽しい思い出なんですよね。父は特に食育に熱心で、イチゴ狩り、タケノコ掘り、潮干狩りと幼少期にいろいろな経験をしたから、自分が作る側になろうと思ったところもあります。農業人口が減少する中、私みたいに農業を楽しいと思ってくれる人が増えるといいなと思い、食育も始めました。
今年放送されるNHKの『コトコト』というドラマがあるんですけど、群馬の農家さんと一緒に撮影を行いました。自分が農業に携わっているから呼んでもらったんでしょうし、農業に携わっていることが俳優として芝居に生きているのでないかと思える作品に出会いました。
農業に携われば携わるほど、おいしい食べ物を作ることは難しいなと感じます。私もできることを頑張り、一緒においしい未来を作っていきたいです。
こばやし・りょうこ 1989年、東京都生まれ。4歳で子役としてデビューし、現在まで映画やドラマで活躍。NHK連続テレビ小説「虎に翼」では、主人公の大学の先輩役を好演した。自身が代表を務める株式会社AGRIKOの農園では、水耕栽培と魚の養殖を組み合わせた「アクアポニックス」に取り組む。