“走る診療室”導入進む オンラインで通院負担減 北海道網走市×網走厚生病院
同病院は同市と周辺4町の中核病院の機能を担う。同市は、移動に負担を感じる高齢者らが増える状況を踏まえ、2023年12月に医療MaaSの実証を始めた。
診療に使う専用車には血圧計や心電図モニター、遠隔聴診器などを搭載する。スロープも備え、車椅子のまま乗り降りできる。診療の依頼を受けると、看護師と運転手が乗車して患者の自宅近くまで出向く。病院にいる医師がウェブ会議システムでオンライン診療する。
同病院の中野詩朗院長は「医療MaaSは、患者の移動負担だけでなく、医師の負担も軽減できる」と期待する。外来や訪問診療の一部をオンラインに置き換えることで医師の移動時間を減らし、空いた時間を活用することで効率的な診療につながるという。
原則的に慢性疾患の患者が利用できる。同市によると、利用した患者の満足度は高く、継続意思も強い。「対面診療と同等の質を確保できている」(健康福祉部)
同部の結城慎二部長は「北海道にはなくてはならない仕組み。最終的には周辺4町を含めた広域で運用していきたい」と語る。
広域で多くの患者が利用できるようにするためには、参画する医療機関の拡大が必要だが、課題もある。移動で長時間拘束される看護師や、看護師が少ない医療機関にとって負担が大きい。
同市で実証に参画する医療機関は現在、厚生病院の他にクリニック1院にとどまる。24年度中の本格運行を目指す市は、専属の看護師を雇用して運行する仕組みを一部で導入。医療機関が参画しやすい体制を整える。
中野院長は「まずは網走厚生病院が参画することで、改善点を抽出する」と意気込む。
新潟厚生連でも
新潟県長岡市は23年11月、山古志地域の診療所で、JA新潟厚生連長岡中央綜合病院と連携してオンライン診療車の運行を始めた。
診療車は集会所などに出向き、同病院の医師がオンライン診療する。診療翌日には、診療所職員が患者宅を訪ねて会計し、薬も届ける。24年末までに延べ41人が利用した。
(徳橋太郎)