[農家の特報班]無人トラクター共済加入可否に地域差? 高価格帯ほど対象外多く
記者に情報を寄せた農家は西日本で米や麦、大豆を手がけ、農機に搭乗せず遠隔操作が可能なトラクターとコンバインを1台ずつ所有する。地元の農業共済組合に加入を申し込んだところ「このタイプの自動運転の農機だと対応していない」と断られたという。
任意の自動車保険には入るが「農機具共済は対応が手厚い。作業中、いつ事故が起きるか分からない。本当は農機具共済に入りたい」と吐露する。
農機具共済の制度を詳しく調べると、この農家が加入できなかった要因が見えてきた。自動運転の農機は性能で区分けされており、どのレベルまで加入できるかは農業共済組合によって異なる。
情報を寄せた農家の農機は、農家が監視した上で無人で動く「レベル2」に分類される。その農家の地元の農業共済組合に問い合わせると現在、対応しているのは直進アシストなど人が乗った状態で動く「レベル1」まで。「レベル2」は対象外だった。
農水省によると「レベル2」を加入対象としている組合は宮城、秋田、栃木、福井、三重、宮崎の六つしかないことも分かった。
なぜ地域差が生じるのか。全国農業共済協会に問い合わせると「農機の価格帯などが影響している」(担当者)との回答を得た。
農機具共済は稼働中の事故がほぼ対象となり「新品で加入すれば、時価ではなく新価で補償する」(同)。農機が高価であればあるほど、農業共済組合が支払う補償額も膨らむ。実際、情報を寄せた農家が所有する自動運転のトラクターとコンバインは1台当たり1500万円を超える。
一方、農機具共済は農業保険法によって、任意共済と位置付けられており、制度共済の農作物共済などと違い国からの補助はない。
「加入者が少なく財源が限られる農業共済組合は、加入対象の農機を限定することもある」(同)という実態があり、現状では、地域によっては高性能で高価なスマート農機は農機具共済に加入するのが難しい状況が続く。
(小林千哲)