農家の課題解決へ新事業 ダイハツ 人手支援や交流人口拡大
人手不足への対応として早ければ2026年度にも事業化を計画するのが、農作業に携わりたい消費者と農家のマッチングサービス「農えん結び」だ。
自然の中で体を動かしたい会社員や中高年のリフレッシュといった目的の他、就農や移住のきっかけ、農家との交流を望む人の参加を想定する。
オンラインで予約した参加者は、利用料として1回当たり500円を払う。1日約5時間、苗の植え付けや収穫、草刈りなどを手伝う。農家は仲介料として1人当たり2000円を支払う。
兵庫県丹波篠山市で23年から実証。24年は同県と京都府、滋賀県で計15回、113人が参加し、ほぼ毎回定員を上回る応募があった。実証に協力した丹波篠山市の農家からは「人手が確保できれば手間のかかる黒大豆の作付けを拡大できる」と好評だったという。
同社は牛ふんの資源化にも取り組む。24年、滋賀県竜王町で畜産農家から集めた牛ふんからバイオガスや堆肥を作る実証プラントを稼働した。堆肥や液肥は町内の耕種農家に還元。畜産農家は処理の手間が省け、耕種農家は肥料費の低減や、有機質肥料を軸とした農産物のブランド化も期待できる。
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同社が主力とする軽自動車は、地方では日常生活に欠かせない。特に、軽トラックは農家の営農と暮らしを支える存在だ。一方で、農業従事者や地方人口の減少には歯止めがかからない。農業や地方の衰退が、軽自動車市場の縮小に直結する危機感から、同社は「農業活性化グループ」を20年に立ち上げた。社員7人が在籍する。
田中宏幸グループリーダーは「農家の暮らしや持続可能な地域づくりは軽自動車メーカーとしての責務」と強調。「『農えん結び』がこれまで農家と接点がなかった人を結び付け、潜在的な労働力を掘り起こすきっかけとしたい」と意気込む。
(木村泰之)