国産米の供給が不安定になる中、輸入米が国内マーケットでじわり浸透している。国産米の不足分を穴埋めする形で、昨秋から家庭向け精米の他、牛丼やおにぎりなど外食・中食へも用途が拡大。割安感で輸入米を支持する消費者もいる。輸入米の需要が定着すれば、国産離れにつながる懸念が大きく、国産米の安定供給が重要性を増す。

国産米は昨夏、スーパーで品切れが多発するなど需給が混乱した。2024年産の出来秋以降も供給は不安定な状況が続き、代替品として輸入米を提案する動きが活発化。米国産「カルローズ」やベトナム産米を5キロ3000円弱で売り出すスーパーが増えた。
年明け以降も国産米の不足感は解消されず、国家貿易の枠外となる民間貿易で米を輸入する業者が相次ぐ。2025年の民間輸入量は1万トンを超える見通しで、過去最高を記録する公算が大きい。民間貿易で1キロ341円の高額な関税を払っても、「国産米より安価に供給できる」(米卸)ことも輸入に踏み切る判断材料となる。
国産米の不足分を穴埋めしようと、輸入米の活用例が増えている。大手米卸の神明は2月下旬、米国産が8割と国産が2割のブレンド米「二穂の匠」(5キロ3700円程度)を一部スーパー売り出した。同社が家庭向けで外国産と国産のブレンド米を手がけるのは初めて。同社は、「商品の品薄感の解消を解消するため」と明かす。

業務用でも輸入米は存在感を増す。大手コンビニのセブンイレブン2月から、「香ばし炒め玉子チャーハンおむすび」(149円)の原料米を国産からオーストラリア産に切り替えた。牛丼チェーンの松屋を展開する松屋フーズホールディングスは24年5月から、松屋を含む9ブランドの一部店舗(約1100店舗)で、米国産「カルローズ」と国産のブレンド米を使い始めた。「国産米高騰で、必要数量が不足したため」(同社)。
割安な輸入米を求める消費者は少なくない。米国産「カルローズ」を5キロ2894円で取り扱う東京都内のスーパーでは、「輸入米を求めて客の列ができて、すぐに売り切れてしまう」(担当者)という。輸入米が国内に根付かないよう、国産需要獲得に向けた取り組みと、国産米の安定供給が急務となっている。
(鈴木雄太)