農水省によると、食品産業で発生する年間食品残さ1525万トンのうち資源として再利用されているのは1121万トン。そのうち8割が飼料で、肥料は1割ほどだ。食品リサイクル法では、食品関連事業者に食品残さの再利用を促す。成分の有効利用などの観点から、再利用の優先順位を①飼料②肥料③キノコ菌床への活用④メタン化──などとしている。

日本土壌協会によると、食品残さを使った堆肥は「窒素、リン、カリウムの含有率が高過ぎず、これらが過剰に蓄積している圃場(ほじょう)への利用に向く」という。残さを利用するため価格が安い点も魅力だ。
一方で課題は、品質を一定に保ちにくいこと。そこで同協会は食品残さを使った堆肥の普及へ、食品リサイクル肥料の認証制度(FR認証)を設けている。一定の発芽率や発酵温度などを満たした肥料を認証。この肥料で作られた農産物などにマークを付与する。
農家の声広まり普及

松山市で廃棄物の収集などを手がけるロイヤルアイゼンは、約20年前から地域で出る食品残さを使った堆肥を製造。地域の農家がそれを利用している。製造した堆肥はFR認証を取得している。
2007年、中国・四国エリアを中心にスーパーを展開するフジ(広島市)や地元の農家と「風早有機の里づくり推進協議会」を設立。ロイヤルアイゼンが、フジや学校給食などで出る食品残さを年間約4000トン回収する。工場では食品残さと菌床を合わせて、75度以上の高熱で発酵を繰り返し、半年ほどかけて堆肥化する。
堆肥は1袋(15キロ)100円で販売。堆肥を施用して育てたタマネギなどをブランド化して、フジの店舗で販売する。ロイヤルアイゼンの姜公佑副社長は、製造当初は「新しい資材ということもあり農家に堆肥を使ってもらえなかった」と話す。その後、「作物が良く育った」という農家の声が広まり少しずつ施用量が拡大。23年時点では約600トンの堆肥を出荷する。今は地域外からも購入者が相次ぎ、出荷制限をかけるほどだという。同社が1・5トン当たり3000円で請け負う堆肥の散布も生産者に好評だ。
(後藤真唯子)
■認証で堆肥の品質を保証
■施用した農産物のブランド化
■散布作業を堆肥製造業者が請け負う