
24年に南東北~九州の37都府県で発生を確認したという農水省の発表に基づき、特報班は発生時期や注意報について病害虫防除所などに取材した。
発生予察注意報でイネカメムシについて言及したのは18府県で、前年比9府県増。ほとんどが斑点米カメムシ類の注意報の中で言及するが、愛知、鳥取はイネカメムシに特筆して注意報を発表した。
関東の米どころ、茨城では不稔(ふねん)が相次ぎ発生。他の斑点米カメムシと防除時期が異なるため、「ホームページで薬剤防除の徹底を促している」(病害虫防除部)と説明した。
埼玉は県随一の米産地である加須市を中心に甚大な被害を受けた。県は7日、100ヘクタール以上の広域防除を実施するJAや農業法人などに対し、上限50万円を補助する「イネカメムシ広域防除緊急対策事業」を新設したと発表した。
23年に災害級の被害を受けたという鳥取県は、24年に初めて注意報を出した。「不稔の被害が爆発的に拡大した」(西部農業改良普及所)と突然の被害増を語った。
過去10年間で確認されていなかったが、24年に新たに発生を確認したのは東京、群馬、山梨、石川、福井の5都県。北陸での発生はこれまでなかったが、米どころの2県で発生した。
今夏気温高く「警戒強めて」
気象庁によると今夏も全国的に気温が高くなる見通し。農水省は「気温が高いとイネカメムシの増殖が盛んになる可能性がある。発生地域に隣接する地域は、特に警戒を強めてほしい」(消費・安全局植物防疫課)と注意を促す。
(石原邦子、高内杏奈)
特報班は県を挙げて防除に注力する鳥取県の取り組みを取材。17日付で詳報します。

<ことば> イネカメムシ
1950年代までは水稲の主要害虫で、70年代以降ほとんど確認されていなかった。斑点米カメムシ類の一種で、穂を吸汁して斑点米や不稔を引き起こす。成虫は茶褐色で体長1センチ程度と大型。