「有機こそスマート農業が必須だ」。同社の三上裕恵代表が強調する。父が1960年代に5アールから始めた化学肥料・農薬を使わない米作りを受け継ぎ、先端技術を取り入れて規模拡大を進めてきた。常勤8人で主食用米50ヘクタール、大豆78ヘクタールを栽培する。

所有するトラクター19台のうち6台に自動操舵システムを搭載。これまで従業員の習熟度によってまちまちだった除草を誰もが高精度にできるようにした。社員の労働時間が削減でき、省力化につながった。以前はシルバー人材なども活用して除草をしていたが、高齢化による人手不足が顕著だ。今年はリモコン式草刈り機も複数台導入し、一層の労力軽減を目指す。
圃場(ほじょう)管理システムで農地1枚ごとの収量や食味、水分量を把握しているのも特徴だ。大豆の減収時は翌年に耕起を多くしたり、ぼかし肥料を多く投入したりして対応。病害虫が出た時は米の栽培に切り替える。大豆畑に散布するのは石灰を10アール当たり100キロだけだが、先進技術を活用した管理で、高収量を実現する。
米は稲わらと、もみ殻・米ぬかで作った自家製堆肥を散布して栽培。減収時は、大豆栽培に切り替えている。10アール当たり収量は24年産480キロと、全国平均(540キロ)を下回るが、有機のため目標水準はクリアできているという。
研究会で農法広める

農水省によると、有機農業の作付面積は22年度末時点で約3万ヘクタール。みどりの食料システム戦略で掲げる100万ヘクタール目標との隔たりは大きい。個々の農家の取り組みを地域で広められるかが課題だ。
瑞宝は、近隣農家6人と中里町自然農法研究会をつくり、有機農法の技術共有を進めている。これまで外部講師を招いた講習会や秋田県大潟村など先進地の視察などを行ってきた。研究会の代表を務める同社の三上智暉専務は「有機農業を全国に広めたい。そのための手段としてスマート農業の活用方法も伝えたい」と語る。
(木寺弘和)
有機規模拡大のポイント
■先端技術で除草高精度に
■農地ごとの収量踏まえ対応
■近隣農家と技術を共有