[論説]どうするでんぷん不足 国は早急に展望策示せ
ジャガイモでんぷんの大半を生産するのは北海道だ。ホクレンによると、ジャガイモでんぷんの販売量は例年16万トン半ばなのに対し、ここ3年の生産量は15万トンほど。これまで在庫を繰り越すことで必要量を補ってきたが今季はそれも尽きる見込みで、供給が必要量を割り込む可能性がある。ホクレンは苦渋の選択として、実需者に対し、でんぷんの制限販売を決めている。
国産ジャガイモでんぷんには、糊化(こか)温度の低さや粘性の高さなどの特徴があり、ちくわやかまぼこなどの練り製品、麺類、インスタントスープ、甘味料など代え難い多様な用途がある。「工場ごとにお客さんがいる」(産地のJA関係者)ほどで、不足分を輸入品で補えばいいという単純な話ではない。
地域の食品産業、ひいては雇用や地域経済を支える上でも、国はでんぷん用ジャガイモの重要性にもっと目を向けるべきだ。
作付け減少は、さまざまな理由が重なったためだ。経営面積の拡大が進み、防除などに労働力がかかる原料芋が増やせなくなった。作り手の減少による種芋不足も深刻で、種芋価格は上がっている。
ジャガイモシストセンチュウへの警戒感も農家が作付けに前向きになれない理由とみられる。発生すると防除に多額のコストがかかり、作付けや共同機械の利用も制限される。栽培すれば、発生リスクがつきまとう。
ただ、でんぷん用ジャガイモは、連作障害を防ぎながら持続可能な輪作をするための重要品目の一つ。減れば小麦やテンサイなど、他の作物にも影響が出かねない。
作付け減少に対し、産地は手をこまねいているわけではない。ホクレンは今秋、JAなどと連携しポスターをはじめ、さまざまなメッセージで農家に作付けを呼び掛けている。今後、栽培の優良事例の共有や効率的な栽培技術の開発などを計画しており、農家支援をさらに強める。線虫の抵抗性品種の普及も進んだ。
ただ、労働力不足や生産費高騰などは、産地の努力だけでは限界がある。農家が経営展望を描けるような施策が欠かせない。
国はでんぷん用ジャガイモ一品目だけの問題と捉えず、食料自給率を高め、農業や地域経済、食品産業を活性化させるため、早急に対応策を示すべきだ。