[論説]青果卸の取扱高増 経営体質の改善が急務
日本農業新聞は毎年、青果卸に事業報告書の開示を求めている。23年度決算は、全国中央市場青果卸売協会の加盟社と取扱高が150億円以上の青果卸の計82社に依頼、回答のあった65社分をまとめた(回答率79%)。
今回の特徴は、①取扱高が前年度を上回る増収が79%(22年度は同65%)②営業赤字を計上したのは12%(22年度は37%)となった。産地から調達する費用増を上回る水準で相場が上昇し、業績が上向いたためだ。野菜は、夏の記録的な猛暑や春先の低温で高値が長期化。果実は天候不順の影響に加え、高齢化などによる生産基盤の弱体化に歯止めがかからず、入荷減・単価高の状況となったためだ。
卸にとっては総じて好調な結果となったが、各社の取扱高を規模別に見ると差が開いた。目立ったのは大都市に拠点を持つ卸で、取扱高上位20社中18社が増収となった。一方で大都市周辺の同21~40社は、増収が13社にとどまり、営業赤字を計上した卸は4社あった。「物流2024年問題」でドライバーの労働時間が見直され、産地が出荷市場を絞り込んだとみられ、取扱高が上位を占める卸との間で集荷力に顕著な差がついた。
ただ、増収増益とはいえ、取扱高に占める営業利益の割合は1%前後。取扱高トップの東京青果でも1・16%にとどまり、薄利多売の構造だ。
卸の寡占化も進んでいる。上位10社の合計取扱高は、調査対象となった全82社の43%で、10年前の同35%と比べて取扱高上位の卸に荷が集中している。このままでは地方卸が疲弊し、産地の衰退につながりかねない。産地にとって、寡占化によるメリットとデメリットを踏まえた取引が欠かせない。
地方卸は、産地にとって重要な出荷先だ。取引する農家やJA、仲卸、小売業者などが抱える適正価格の実現や産地育成、生産振興、実需者ニーズの把握など、きめ細かな対応こそ経営安定の鍵を握る。一部の地方卸では、物流問題で首都圏への運送が難しくなった産地からの集荷に力を入れ始めた。市場外の企業と連携する動きも出ており、参考にしたい。
天候不順や物流危機などのリスクを回避するには、卸単独では難しい。卸同士の再編統合やネットワークを強化し、相場に左右されない経営体質の改善が急務だ。