
もともとは冬場の狩猟解禁期間の猟による獲物だったのですが、近年は野生鳥獣による農作物被害などを阻止するために有害鳥獣の捕獲が行われています。農林水産省の資料によると、令和4年度の捕獲頭数はシカが72万頭、イノシシが59万頭で、合わせて131万頭ですから、1頭当たりの重量を考慮せずに頭数だけで見ると令和4年次の牛のと畜頭数108万頭を上回ります。
ところが、令和4年度に全国の750処理加工施設でのジビエ利用頭数はシカで10.9万頭(利用率15%)、イノシシで3.6万頭(同6%)と、大変低くなっています。有害鳥獣ではあってもそれを廃棄せずに、いただいた命をジビエとして有効に活用するために、長野県の蓼科でオーベルジュを営むオーナーシェフの藤木徳彦氏らにより、平成29年3月に一般社団法人日本ジビエ振興協会が設立されました。同氏は「ジビエは地域の新たな特産品として地方創生の一助になる」と考え、適正に捕獲された野生鳥獣を、衛生的に処理・加工し、流通規格に則った安全で美味しく価値ある食の資源として活用するために、ジビエセミナーやジビエ料理コンテストなど様々な活動を行っています。
また、平成30年には、生活者がジビエを安心して安全に食すことができるように、農林水産省により「国産ジビエ認証制度」が制定され、厚生労働省のガイドラインに基づいた適切な衛生管理を行う施設を同協会が認証しています。是非皆さんもたまには写真のマークのあるジビエを美味しくいただいて、この酷暑を乗り切ってください。
公益社団法人全国食肉学校
専務理事学校長
小原和仁