[論説]過去最多の子ども食堂 地域の食材で支えよう
2023年の子ども食堂の数は前年と比べ1768カ所も増え、増加数も過去最多となったことが、認定NPO法人全国こども食堂支援センター・むすびえの調査で分かった。新型コロナが5類に移行し、会食しやすくなったことや、こども家庭庁の創設で子どもの居場所づくりに関心が高まったことが背景にある。
物価高騰で家計は厳しさを増している。まして一人親世帯にとって死活問題だ。一人親世帯の食料支援を行うNPO法人しんぐるまざあず・ふぉーらむが支援申込者に行ったアンケートによると、「現在の暮らしが苦しい」と答えたのは98%、米などの主食を買えないことが「あった」は65%、親の食事を1食抜かすことが「よくあった」は50%だった。母子世帯の平均年収は272万円(20年)にとどまるだけに、所得格差は食の格差につながっている。官民挙げた支援が必要だ。
政府は、生活困窮者や買い物弱者に食料を安定的に届ける政策に力を入れる。24年度は、食品アクセス関連予算として3億200万円を盛り込み、前年度当初予算と比べて倍増させた。子ども食堂の開設やフードバンクで食品の取扱量を増やす際にかかる経費などを助成する。食を軸とした支援の強化は欠かせない。
子ども食堂が小学校区の中に1カ所以上ある割合を示す充足率は、全国平均で初めて3割となり沖縄、鳥取、東京は50%を超えた。上位の都県では食堂を支援する団体を設置したり、食材を供給する企業とのマッチング支援をしたりと、活動支援に力を入れる。一方、長崎、秋田、福井などの各県は10%台にとどまり、格差が開いた。優良事例を参考にしながら「あっちにも、こっちにも食堂」を展開してほしい。
子ども食堂が発足して約10年がたつ。「子どもが一人でも来られる無料または低額の食堂」と定義され、子どものため、困窮家庭支援のためと思われがちだが、地域に開かれた食堂であってほしい。不登校などで生きづらさを抱えた子や親、高齢者らが一息つける場所として、住民による自治活動を行政が支援する、新しい官民連携が望ましい。
JAグループも米や青果物、未開封食品などを届けたり、女性部が子ども食堂を開いたりする例もある。食と農を通し、地域の子どもらの未来に積極的に関わろう。