[論説]ウクライナ侵攻2年 和平への明確な意思を
軍事侵攻の長期化に伴って、「非人道的な兵器」とされるクラスター弾まで飛び交い、市民らの犠牲者は増えている。欧州では「支援疲れ」も指摘されているが、市民を恐怖と不安に陥れる危機を黙認してはならない。
ロシアとウクライナ両国を和平交渉のテーブルにつかせる必要がある。国連は、双方に対して交渉の場を提供し、和平へのプロセスを促す役割を果たすべきだ。
中立な仲介者である国連が主導する交渉は、持続可能で公正な和平の実現に向けた重要なステップとなる。機能不全に陥っている安全保障理事会の改革を急ぎ、各国が積極的に協力することが不可欠だ。安保理の非常勤理事国である日本の役割は大きい。唯一の戦争被爆国となった歴史的な経緯や平和主義に立って、平和的な解決に向けた積極姿勢をとるべきだ。
紛争の発端となったロシア軍による一方的な侵攻は、国際法に違反し、平和と均衡を脅かすものだ。岸田文雄首相は「法の支配に基づく自由で開かれた国際秩序」を強調している。その実現に向けた具体的外交が重要となる。
米国など北大西洋条約機構(NATO)加盟国や非加盟の国にも働きかけ、紛争の長期化につながる北朝鮮や中国などによるロシア支援を止めなければならない。
紛争が長期化するほど世界的な食料や物価、エネルギー高騰は深刻化する。ウクライナの安価な穀物が手に入りにくくなった途上国などでは、食料とエネルギー高騰による二重苦で政情不安に陥った。日本でも輸入食料や肥料、飼料、資材の高騰が続き、食料安全保障を脅かしている。
ウクライナ危機の解決は、世界と日本の経済や社会の安定につながることを再確認したい。日本は、19日に開かれた日・ウクライナ経済復興推進会議で、農機やスマート技術の提供などでの連携を約束した。できる限りの人道支援を続けるべきだ。
歴史から学べば、いかなる戦争も、市民が大きな犠牲を受ける。ウクライナでは1万人以上が犠牲となり、国内外への難民は1000万人に及ぶ。中東ではイスラエルがパレスチナ・ガザ地区への攻撃を続けるなど世界各地で紛争が相次ぐ。悲しみや憎しみの連鎖を拡散してはならない。
国際社会は和平への明確な意思を示す必要がある。日本はその先頭に立つべきだ。