[論説]JA全国青年大会 若者の声 組織に生かせ
第70回の節目を迎える今大会のスローガンは、「未来へ種を蒔(ま)こう~農業っていいもんだ。~」。地域や農業を活性化するための“特効薬”はない。青年部員一人一人が描く未来像を実現するためには、厳しい環境の中で自らの経営を見つめ直す努力と、将来を見据えた組織活動という「種まき」が重要となる。
担い手の減少は深刻だ。農水省は、基幹的農業従事者が、20年後には現在の4分の1、30万人に激減すると見込む。全国農協青年組織協議会(JA全青協)に加盟する青年組織の部員も減っている。農地を引き受ける担い手が減る中で、食料安全保障を支える生産基盤をどう強化するかは大きな課題だ。今こそ、青年部の裾野を広げて女性農業者や地域おこし協力隊、移住者など多様な人と手を組み、地域を支えていく大胆で柔軟な発想が求められている。
農業と地域を持続可能なものにしていくには、全国の青年部員による横のつながりと行動力、ユニークなアイデアが大きな力となる。1000人以上の青年部員が集う全国青年大会は、こうした力を生み出す機会となる。
昨年の「青年の主張」で最優秀賞となった牧之瀬佳貴さんは、北海道弟子屈町で新規就農した酪農家。酪農にも同町にもゆかりがなかったが、青年部の情熱に触れることで「新規就農者として町と酪農の素晴らしさを伝えたい」と発信した。活動実績発表で最優秀賞のJAいがふるさと青年部は、障害者の就労の場を求める声に応え、農福連携を地元に定着させた。新規就農者や子どもたちに農業の夢や希望を与えたい――。どの発表にも前向きな思いがにじむ。今大会も期待したい。
JA幹部も、青年組織の熱い思いや発想をしっかり受け止め、組織運営や地域づくりに生かすべきだ。組合員や地域住民の多様化するニーズを、JA事業に反映させなければならない。地産地消や自給率向上、適正な価格形成の実現には、若者や子育て世代の理解の醸成が先決だ。
混沌(こんとん)とする時代の中で、地域農業の課題を解決するヒントは、若者たちが握っている。それを引き出すには、地域の農家やJAグループの多様性と包摂性が問われている。青年組織が新しい種をまき、それを温かく受け止める土壌があることが、農の未来につながっていく。