[論説]地域計画 期限まで1年 農の将来考える一歩に
地域計画は、2023年4月に施行された改正農業経営基盤強化促進法に基づき、市町村に策定が義務付けられた。地域で協議し、10年後に誰が農地を利用するのか、1筆ごとに示す「目標地図」を作る必要があり、25年3月末が策定の期限となっている。
農水省によると、地域計画の策定が必要な市町村は1672。このうち9割が、今年3月末までに協議の場を設置する意向だが、計画策定の見込みは1割強にとどまる。ほとんどの市町村が計画作成に着手はするが、策定までには時間がかかるとみている。市町村によって進捗(しんちょく)状況はまちまちで、計画策定に着手していない市町村も1割あるという。
農業人口の急減が見込まれる中で、国は農地の集積・集約化は急務とみる。地域計画は、今後の地域農業の設計図として「市町村の自治事務として現場起点、ボトムアップで策定していただくもの」(坂本哲志農相)と説明する。
目標地図の作成に向けては、まずは農地の受け手となる担い手の意向をしっかりと把握することが肝要だ。その上で、丁寧に地権者らの理解を得ていく必要がある。計画作成が進む地区でも、以前から何年もかけて取り組んできたところが多い。初めから完璧を目指さず、話し合いを重ねながら少しずつ計画を更新していくしかない。
一方で、過疎・高齢化が進む中山間地域などでは、いきなり10年後の担い手といわれても、戸惑ってしまうだろう。計画策定に当たっては、集落などの単位で協議を行う区域を設定する必要があるが、市町村によってはこうした地区数が数十にも及ぶ。それぞれの地区で話し合いを進めなければならないが、進行・調整役となる市町村や農業委員などのマンパワーが足りない。国は、地域の取り組みを尊重し、段階に応じてしっかりサポートすべきだ。
政府は、開会中の通常国会に、食料安全保障の強化を柱とする食料・農業・農村基本法改正案と併せて、農地の総量確保に向けた農地関連法案を提出した。
当たり前のことだが、農地の確保は転用規制を強化するだけではできない。まず農業で十分な所得を確保できることが大前提となり、都会から農村に人を呼び込むための方策についても、もっと詰めた議論をしていく必要がある。