[論説]狙われる軽トラック 盗難防止策しっかりと
警察庁によると盗難被害が多かった11車種のうち、2車種が軽トラ(スズキ「キャリイ」、ダイハツ「ハイゼット」)。トヨタ「アルファード」「ランドクルーザー」「レクサス」などの高級車が並ぶ中、軽トラ2車種は6、7番目に盗難が多かった。都道府県別では千葉、愛知、埼玉、茨城、神奈川各県と続き、全体の5割以上を占めた。
自動車の盗難は、ここ20年で大幅に減少した。同庁が3月に公表した自動車盗に関するまとめでは、23年の認知件数は5762件と、ピークだった03年の6万4223件と比べて9割も減った。盗難防止対策が普及したことが要因とみられる。電子的に鍵を照合する防犯装置の「イモビライザ」の搭載や、衛星利用測位システム(GPS)を追跡できる装置の活用などが効果的だという。摘発率は23年が42・7%と、20年前(18・6%)に比べて向上している。
盗難対策が広がる中、軽トラが狙われる背景には、海外での需要が高く、型が古くても壊れにくい特性がある。米国では通称「25年ルール」と呼ばれる制度があり、製造から25年が過ぎた自動車はクラシックカーに分類され、輸入の要件が緩和される。個性的なデザインで小回りが利き、頑丈な軽トラは高値で取引されているという。
日頃から使っている農家にとって、軽トラまで狙われているのは意外に感じるのではないか。そこに落とし穴がある。古い軽トラは、イモビライザやGPSも付いていないことが多く、農家の防犯意識も希薄な場合もある。
ただ、軽トラを盗難して海外などに持ち出そうとしても、税関で摘発される。このため、トラクターなど農機盗難のように、解体して部品として輸出されることも想定される。狙われている事実が明らかになった以上、日頃からの盗難防止対策を徹底することが重要だ。
23年に盗難被害に遭った事例の25%は、鍵を車に差したままだったり、運転席や周辺に鍵を置きっ放しにしていたりというケースが目立った。農業法人など複数の人が使う場合はすぐに動かすからと、鍵を付けたままにしてしまいがちだ。
盗まれた際の心理的、経済的な負担は重い。日頃から軽トラや農機などへの防犯意識を高め、万一の際の共済加入も検討したい。