[論説]農業現場の外国人材 教育・研修の充実さらに
外国人技能実習制度は、日本の優れた技能を身に付け、出身国に広めることで国際協力を進めることが目的。出入国在留管理庁によると、約36万人(2023年6月時点)の外国人技能実習生が国内で活躍している。出身はベトナム、インドネシア、フィリピンが多く、農業関係は2万8310人となっている。
外国人材を受け入れる側は、実習生に対して適切な教育や研修が求められる。特に4月からは、個人農家や農業法人が外国人を含む労働者を雇った際に「雇い入れ時教育」が必要になった。危険が伴う農機や刈り払い機、農薬散布、高所作業、高温下での作業など注意や守るべき対策の指導が義務づけられる。「安全第一」を心に刻もう。
いまや農業にとって欠かせぬ存在である一方で、外国人の失踪は相次いでいる。出入国在留管理庁によると、22年は9006人が失踪した。農業関係は948人と1割を占め、内訳は耕種779人、畜産169人。職種別の最多は建設関係の4717人。危険な産業ほど安全への気配りや労働条件や住環境の整備、雇用主との積極的なコミュニケーションが求められる。
懸念されるのは、円安が進む中で、外国人技能実習生が今後も日本を選んで来てくれるだろうか、という点だ。
注目したいのは、宮崎県による国際的な「人づくり」の試み。県とベトナム国立農業大学が連携し、技能実習生の育成を始めた。全国で初めて同大学内に県内での技能実習を目指す専門クラスを設置。そこで学んだ13人が今春来日し、県内の農業法人で実習を始めている。
送出機関は学内に設置した企業が担い、実習生が支払う手数料などを必要最低減に抑えた。実習生からは「宮崎で盛んな施設園芸を学び、母国で生かしたい」という声が上がっている。実習生は優れた宮崎県の施設園芸などの技術を学べ、送出機関に多額な手数料を支払うリスクもない。事前に県の農業を学んでいるため、安心して産地も受け入れられる。
外国人技能実習制度は、27年にも新制度「育成就労」が創設され、対象外だった稲作や肉用牛を含む全分野で外国人が働けるようになる。その先に定住が可能な「特定技能」制度がある。農業を通して交流を重ね、互いを尊重する共生社会の実現を目指そう。