[論説]始まった物流24年問題 協業進め輸送力向上を
政府は、運転手の働き方改革の一環で、拘束時間を年間216時間短縮し、3300時間という上限を設けた。この「物流2024年問題」の影響で、24年度の輸送力は何も対策を取らなければ、コロナ禍前の19年度と比べて全体で14・2%低下すると民間のNX総合研究所が試算した。特に深刻なのは農水産品で、同32・5%低下すると見る。
スーパーやコンビニなどの小売り業界では、物流問題への対応を「競争」ではなく「協力」する分野と捉え、共同輸送や連携が進んでいる。
23年に首都圏の食品スーパー4社が発足させた物流研究会には、地方スーパーも参画。加工食品を対象に、スーパーの物流センターでトラックの荷待ち時間を1時間以内にする自主目標を掲げ、24年2月に92%達成にこぎつけた。トラックの予約システムの導入による混雑緩和の効果が大きく、青果物流通でも卸売市場での導入を急ぎたい。
スーパーが次に着手するのが、生鮮農産物や冷蔵の畜産物の輸送改善だ。同研究会は24年度、青果卸なども含めた意見交換を始め、並行して共同配送や各社の空き車両の有効活用を進める。
コンビニ業界ではローソンとファミリーマートが本格的な共同配送を始めた。東北地方の物流拠点間で、冷凍食品の輸送予定量を2社で把握し、ファミリーマート側の車両の空きスペースにローソンの商品を載せる。ライバルの相乗りは以前なら考えられなかったことで、業界の危機感がにじむ。青果物も、ライバル産地との連携など、早急に協業を模索するべきだ。
鮮度を高めるため、市場で取引しても、商品は産地から直接、スーパーの物流センターに運ぶ例もある。高速道路のインターチェンジ近くなどには物流拠点が集中している。相乗り可能な産地を増やし、配送先を近接するスーパーの物流センターなどに集約できれば積載率は上がる。
地方の小売りからは、大都市に農産物の出荷が集中し、地元に産地があっても商品を買い戻す状況が頻発しているとして、効率の悪さを指摘する声が上がる。解消に向け、地方での分荷が鍵を握る。
通常、トラックで日帰り可能な輸送距離は250キロとされる。東京から名古屋、福岡から広島などの距離感だ。協業を進め、効率良く都市に運ぶ連携策を模索したい。