[論説]ネット詐欺の急増 手口巧妙、警戒怠るな
警察庁は3月、SNSを使った投資詐欺と、恋愛感情を抱かせるロマンス詐欺の被害総額が2023年は約455億円に上ったと発表した。被害が急増していることから、初めて実態調査を行った。
特に深刻なのが投資詐欺で、被害額は約278億円。月ごとの件数を見ると1月は85件だったが、次第に増えて7月には200件を超え、12月には369件と急増した。被害者の年代は10~80代と幅広く、特に40~60代で多い。最初の接触は、SNSのフェイスブックやインスタグラム、マッチングアプリなどさまざまで、その後の連絡はLINEに移るケースが大半だ。多くの場合、国内の投資家を詐称。著名な実業家らの名前を無断で使用し広告を出しているケースもある。日常的なやり取りを通して信用させ、指定口座への振り込みを求めてくるという。
スマホに直接送信してくるショートメッセージサービス(SMS)にも警戒が必要だ。IT企業のトビラシステムズの調査によると、「株」「新NISA」など投資関連のキーワードを含む詐欺SMSが今春、急増しているという。多い時には、1日に数万件規模で送信されている。同社は、携帯電話会社や運送会社を装ったSMSも増えているとして注意を呼びかけている。通話料金の未払いや再配達を知らせるメッセージが知らない電話番号から突然送られ、リンク先をクリックすると偽サイトにつながる。
それ以外にも、さまざまな手口がある。独立行政法人の情報処理推進機構(IPA)は「情報セキュリティ10大脅威」と題した資料を公表し、ネットやスマホを介して、金銭や個人情報などが盗まれる脅威について解説している。金銭目当ての悪質なメッセージは誰にでも届く可能性があり、誰もが被害者になり得るという意識を持ちたい。
だまされないためには、まず犯罪者の手口を知ることから始まる。地域密着型のJAだからこそ、できることは多い。各地で開かれているJAスマホ教室は、絶好の機会だ。組合員・利用者への訪問時や窓口対応などの際には、ネット詐欺への警戒を促してほしい。
ネットを利用した詐欺は、幅広い年代で被害が広がる。青年部や女性部の活動、JAの催しなど、さまざまな機会を通じて注意を促そう。