[論説]睡眠不足の日本人 命の問題と捉え改善を
厚生労働省の国民健康・栄養調査(2019年)によると、1日の睡眠時間が6時間未満の人の割合は男性37・5%、女性40・6%。中でも男性30~50代、女性40、50代は約5割に上る。21年の経済協力開発機構(OECD)の調査報告でも、日本人の平均睡眠時間は7時間22分と、加盟する33カ国中、最短だった。
同省は「国民一人一人の十分な睡眠の確保は重要な健康課題」として2月、「健康づくりのための睡眠ガイド2023」を公表。睡眠が不足すれば、生活習慣病やうつ病などの発症や死亡のリスクが高まることが明らかになっていると指摘し、1日の睡眠時間を「少なくとも6時間以上」確保するよう呼びかける。
国民健康・栄養調査によると、睡眠の妨げとなっている要因として、仕事や育児が上位に入る。従業員の健康を守るために、職場の管理者は、長時間労働をさせていないか、常に気を配る必要がある。家庭では、家族の健康のために育児や家事の分担を積極的に進めよう。
農業現場では、繁閑によって仕事量の変動は大きい。特に家族経営の場合、繁忙期は睡眠時間を削ってまで作業を進めてしまいがちだ。睡眠評価研究機構代表の白川修一郎氏は、睡眠不足が積み重なった「睡眠負債」のある状態では、疲労の自覚が乏しくても脳の働きは低下し、作業ミスや事故を招くリスクが高まると警鐘を鳴らす。長時間労働で睡眠不足が続けば、疲れが取れず、農作業の効率を落とすばかりか、命の危険につながりかねない。
スマホやタブレットなどの依存にも注意したい。若年層を中心に寝る前にスマホを見る習慣が定着している人は多い。睡眠時間が減るだけでなく、ブルーライトで寝付きが悪くなる恐れがある。
さらに気を付けたいのが飲酒だ。アルコールは、一時的には寝付きを良くしても、睡眠の質を下げる。習慣的な飲酒は、アルコール依存症やがんなどさまざまな悪影響がある。同省は2月、飲酒に関する初のガイドラインを公表。生活習慣病のリスクを高める1日当たりの純アルコール量を「男性40グラム以上、女性20グラム以上」とした。20グラム相当はビール中瓶1本、日本酒1合などが目安となる。
睡眠不足は病気や事故につながる。健康のために暮らし方を見直そう。