[論説]トランプ氏勝利宣言 対日圧力の高まり警戒
米大統領選は、トランプ氏の強さが際立つ結果となった。選挙戦は、途中撤退したバイデン大統領の後を継ぐ形で、副大統領のハリス氏が立候補。「中間層の底上げ」などを訴え、女性初、アジア系としても初の大統領を目指したが、無党派も含め支持の広がりを欠いた。
対するトランプ氏は、8年前の大統領就任時の勢いそのままに善戦。「米国を再び偉大な国に」をスローガンに、4年前に失った政権を奪還し、返り咲くことに。現政権の経済、移民政策などを批判し、物価高や失業に苦しむ国民の支持を得た。
米国を二分する選挙戦は、国内に根深い分断と対立を残したばかりでなく、世界随一の経済、軍事大国米国のトップの交代は、緊張を高める国際秩序にも大きな影響を及ぼすだろう。
「米国第一主義」を政治信条とするトランプ時代の再来となれば、対日政策も変化を来すのは間違いない。最初のトランプ政権時にそれは経験済みだ。環太平洋連携協定(TPP)からの離脱がその象徴であり、2国間交渉で有利な条件を引き出す通商戦略である。
JA全中の国際農業・食料レターによると、トランプ氏就任なら、輸入関税引き上げなどをてこに相手国に譲歩を迫る通商政策が再来する可能性を指摘している。農業所得の減少や農産物貿易収支の悪化を背景に、「米国の農業団体や議会から関税削減・撤廃を含む市場アクセスの拡大を求める声が高まるのは必至」と予測している。
トランプ氏は選挙中も中国を念頭に、輸入品に大幅な関税をかけることなどを主張しており、対日貿易でも予断を許さない。特に延期になっている新たな農業法の制定作業を控えており、農業団体や議会の圧力はさらに高まることが予想される。こうした強硬姿勢は、電気自動車(EV)や半導体などの分野でも予想され、日本の産業界も身構えている。
懸念されるのは、日米同盟の関係の在り方を含め、日本政府がトランプ氏とどう向き合うのか、明確に見通せないことだ。先の衆院選で与党過半数割れとなり、政権基盤が極めてもろくなっており、外交にも影を落としかねない。来週発足する政権には日本農業や国益を守り抜く強い姿勢を貫くよう求める。