[論説]発生相次ぐ鳥インフル 「いつ・どこでも」認識を
同病は今季、10月17日に北海道厚真町の肉用鶏農場で初めて発生した。野鳥では北海道乙部町で、9月末に回収された個体で確認済みだった。専門家は、同病に感染した渡り鳥が国内に飛来し、感染した鳥と同じ水場にいた野鳥を介して、農場にウイルスが侵入した可能性を指摘する。
同病の発生が過去最大だった2022年度シーズンは、農場で発生が確認された時期も過去最も早かった。だが、今季の初発時期は22年度より11日も早い。気がかりなのは、初発後も農場で発生が続いていることだ。10月23日には、採卵鶏の飼養羽数が全国一の千葉県内の農場で、2例目が発生。26日には新潟県、31日には島根県の農場で発生した。発生のペースは「昨年度シーズンより早い」と小里泰弘農相が危機感を高める中、11月6日には再び、新潟県内の農場で、7日には香川県内の農場でも確認された。
島根県によると、近年は県内で野鳥での発生が確認されていなかったという。それにもかかわらず農場で発生した。専門家は「渡り鳥は全国的に飛来しており、どの地域も警戒が必要」と指摘する。今季は発生が例年以上に早いことを改めて認識し、畜産関係者で対策を共有しよう。
発生が過去最大に上った22年度は84件発生し、殺処分対象羽数は約1771万羽に上った。一方、23年度は、発生は11件と22年度の1割ほどまで感染が減った。大幅に発生が減った要因として、22年度の経験を踏まえて、シーズン当初から農場関係者の警戒感が強く、対策の徹底が進んでいたとの指摘もある。
一方で、同省が23年度の発生農場を調査したところ、鶏舎の集卵ベルトに隙間があったり、防鳥ネットに穴が開いていたり、養鶏場に入る際に衣服を交換していなかったりと不備が見つかった。同省は手指や車両の消毒、野鳥などの侵入を防ぐネットの設置・修繕などの実施状況について10月から翌年5月まで自主点検するよう求めている。
気温が下がるにつれて消毒に使う逆性せっけんの効果は弱まる。畜産技術協会は、逆性せっけんに粒子の小さい水酸化カルシウムを混ぜると、低温下でも消毒効果が保てると突き止めた。混合液は動力噴霧器による散布や踏み込み消毒槽などで使える。点検に加えこうした技術を活用し、感染拡大を食い止めよう。