[論説]金属の盗難多発 ケーブル被害を防ごう
警察庁によると、金属盗の件数は1~6月の暫定値で1万件を超えた。前年は1年間で1万6000件で、今年はそれを上回るペースで盗難が相次いでいる。統計を取り始めた2020年以降、被害は年々増加している。金属価格の高騰が背景にある。
群馬県内で11月発覚したモーターの盗難は、当該JAが把握しているだけで5件あった。農家がポンプ小屋の扉に異変を感じ、確認したところ切断したコードや外されたボルト、壊された南京(なんきん)錠などが散乱していた。昨年11月も茨城県内の水田で、100個以上の真ちゅう製バルブが盗まれた。被害を受けた生産者は20~30人に上り、50ヘクタールで痕跡があった。
対策はモーターやバルブを外して保管すること、バルブはプラスチック製に変更することなどがある。できるところから実践しよう。
特に狙われやすいのは高価な銅線ケーブル。群馬県内の養鶏場では7月、約170メートルのケーブルが切断され、盗難に遭った。被害総額は約500万円相当に上る。これにより養鶏場の空調が停止し、一部の鶏が暑さで死ぬ被害が出た。高病原性鳥インフルエンザが多発する今冬は、窃盗犯の侵入でウイルスの持ち込みリスクがさらに高まるだけに、警戒が必要だ。
摘発された人数も多い。太陽光発電施設から金属ケーブルを盗んだのは6月末で60人と、昨年1年間(61人)の摘発数に迫る勢いだ。国籍別ではカンボジア人が最多で、次いで日本人となっている。
太陽光発電協会によると、狙われやすい施設として、人目につきにくい立地で外から見えにくく、保守点検や防犯・警備状態が十分でないと思われる特徴があるという。
防犯のため、人工知能(AI)カメラの設置や光、音による威嚇により、「施設に入らせない」ことが重要だ。盗難センサーで異変があった場合に駆け付けられるようにすることもポイントとなる。
盗品と知りながら買い取っていた疑いがあるとして警視庁は18日、栃木、茨城両県の金属買い取り店4店を家宅捜索した。既に逮捕されたタイ人の窃盗団が1都7県で100件以上の犯行を繰り返し、盗品のほとんどを4店舗に売却していたとみられている。
関東で多発する盗難被害は今後、各地に広がる恐れがある。対策を強化しよう。