[論説]耕畜連携の推進 飼料作物の支援拡充を
ウクライナ危機や円安の影響で輸入飼料、肥料の高騰が長期化している。2023年の輸入乾牧草はここ3年で6割高、肥料原料は一時より落ち着いたものの、3年前より5割以上高い。このため、輸入依存からの脱却に向けて国産へ切り替えが進み、粗飼料自給率は23年に80%と3年で4ポイント増えた。目標の国産100%へ着実な歩みとしたい。
鍵となるのが耕畜連携だ。広島県三次市の県酪農協みわTMRセンターは、完全混合飼料(TMR)を製造し、県内の酪農家に供給する。主原料は、県内の集落営農組織が契約栽培した極短穂型の発酵粗飼料(WCS)用稲。酪農協が専用収穫機で刈り取り、堆肥の散布も請け負う。耕種農家向けには栽培、畜産農家には給与の研修会も開く。
中山間地域のため1筆平均20アールという小さな減反田や転作田で飼料稲の栽培を積み上げた結果、栽培面積は200ヘクタールを超えるまでになった。管内ではTMRを使う畜産農家が水田飼料作物生産協議会を立ち上げるなど、耕畜連携の輪が広がっている。持続可能な農業農村づくりへ、こうした輪を広げたい。
鹿児島県伊佐市では、飼料生産受託組織のグリーンネットワークとどろきが、WCS用稲と牧草を100ヘクタール超の水田で生産、肉用牛農家に供給する。鹿やイノシシによる獣害に悩まされながらも、ドローンで牧草播種(はしゅ)にも挑戦。「地域を守りたい」という現場の熱意と地道な努力が耕畜連携の要となっている。
一方、こうした取り組みに水を差すのが政府の政策や提言だ。政府は、飼料用米の一般品種について今年産から単価を引き下げ、水田活用の直接支払交付金(水活)は5年に1度の水張りをしない水田を交付金対象から外した。さらに財務省は財政制度等審議会で、27年度以降は飼料用米を「交付対象から外すべき」だと提言。財務省は、この国の農業をつぶそうとしているのか。今、必要なのは耕畜連携の推進に向けた支援だ。
現場からは、資材高を受けて主食用米の価格が上がったことで、転作田でのWCS用稲や牧草栽培を主食用米へ転換する農家が出るのでは、との声も上がる。畜産と耕種農家による地域内循環は輸入資材の高騰対策だけでなく、環境負荷の軽減や飼料自給率向上などあらゆる課題に対応する。循環の輪が途絶えないよう、施策の充実を求めたい。