[論説]作付け減続くテンサイ 輪作体系の基盤を守れ
テンサイの作付け減は近年特に著しい。2023年産の作付面積は5万1081ヘクタールと前年産と比べて7%減となり、ここ30年で最大の減少幅となった。テンサイが地中で肥大するためには十分な肥料が必要で、近年の肥料高騰が追い打ちをかけた。24年産も減少が止まらず、前年比で4%減の4万8847ヘクタールと5万ヘクタールを割り込んだ。肥料高騰に加え、23年の異常高温で病気が発生して大不作となり、農家の作付け意欲が減退したためだ。
作付け減は、想定以上のペースで進んでいる。農水省は、コロナ禍で観光産業が大きく落ち込み土産品などに使う砂糖の消費が減ったことで、サトウキビ、テンサイを原料とする国内産原料糖と輸入との価格差を調整し、国内の農家を支える「糖価調整制度」の収支が悪化。このため同省は北海道のテンサイを減産する方針を示し、26年には5万ヘクタールまで減らす指標を設定した。だが、国の方針以上に道内の生産基盤は弱体化が進み、指標を2年も早く下回ってしまった。
同じく国産砂糖原料である九州・沖縄のサトウキビも、台風10号による倒伏被害に苦しみながら農家が栽培を続けている。テンサイもサトウキビも日本の北端と南端の農業を支える。農業を営む農家の存在が、国土保全に貢献している点を評価すべきだ。
観光需要の回復で砂糖の需要が増えても作付けを増やせない事態とならないよう、政府は資材高騰対策や関連交付金による支援を拡充させてほしい。22日に東京都内で行われたJAグループ基本農政確立全国大会で、北海道から参加したJA組合長は「輪作の維持がジャガイモや小麦など全品目の生産量確保につながる」と、テンサイの作付け維持へ支援強化を訴えた。
砂糖を製造する糖業会社の工場も、生産が減れば事業は回らなくなる。農業と両輪の製糖工場は地域の雇用を創出し、地方経済を支える礎だ。
砂糖を取り巻く環境は極めて厳しい。北海道と九州・沖縄のテンサイ、サトウキビ栽培を支えることは、地方経済の安定とともに、食料安全保障の確保、国土保全につながることをもっと評価すべきだ。農水省は、みどりの食料システム戦略などを通し、持続可能な農業の推進を掲げるが、輪作体系の維持強化こそ持続可能な農業につながる。