[論説]米政策の見直し 所得の確保を最優先に
米政策の今後の在り方を巡り、議論が活発になってきた。自民党の森山裕幹事長は先月22日のJAグループの基本農政確立全国大会で「米政策の改革は待ったなしだ」と述べ、転作助成である水田活用の直接支払交付金を含め、直接支払い全般の検討を進める考えを示した。
同党は5月の提言でも、将来にわたって安定運営できる水田政策の確立へ、日本型直接支払い、経営所得安定対策(ゲタ対策)の見直しに言及している。新たな食料・農業・農村基本計画の策定期限も年度内に迫る中で、農政の具体化論議はこれから急加速しそうだ。
農水省は、新たな基本計画の策定に向けた審議会で、土地利用型作物(米・麦・大豆)のショッキングな将来を予測した。経営体数は、2020年の60万から30年には27万に半減。経営面積も216万ヘクタールから142万ヘクタールへと減少するとみる。同省はこうした危機に対し、農地の集積・集約や、スマート農業の導入推進などの方向性を示す。
深刻な担い手不足への対応として、規模拡大政策も進めざるを得ないだろう。ただ、それが困難な中山間地域は、米の作付面積の3分の1を占め、限界がある。さらに規模拡大だけでは、担い手の減少に歯止めがかからないという根本問題への解決にはなり得ない。米を作っても十分な所得がないという現実に、真正面から向き合うべきだ。
米の60キロ当たり生産費(個別経営体)は、22年が1万5273円。これに対し、粗収益は1万2000円にとどまる。赤字幅は広がっており、1980年から2022年にかけて生産費は4118円圧縮したが、粗収益は6495円も減少。米価下落でコスト削減努力が帳消しとなり、生産者を苦境に追いやっている。再生産可能な米価の実現は、待ったなしだ。
適正な価格形成に向けた同省の協議会に、米のワーキンググループができたことは、大きな一歩になる。ただ、家計に及ぼす影響を嫌う世論もあり、価格転嫁には難しさも予想される。消費者には、自らの食料安全保障の問題として一定の理解を求めたい。
直接支払い全般の見直しも始まる中で、所得の下支え機能の強化についても検討を期待したい。将来にわたる米生産の維持へ、政策を総動員する必要がある。