[論説]生消交流の課題 生協との連携強めよう
これまで、生消連携を進める上で欠かせなかったのが交流イベントだ。都会の消費者が農村を訪れ、農家と共に田植えや収穫などの作業を体験し、農業・農村への理解を深めることが目的だ。同時に、消費者が何を求めているのか農家が直接知ることで、相互理解につながっていた。
生活クラブ事業連合生協連は、田植えや稲刈り、農産物の収穫体験といった生産者と生協組合員との顔の見える関係を50年以上に渡り築いてきた。こうした長年にわたる関係性が、生産資材の高騰を踏まえた農畜産物の価格転嫁についても、生協組合員との話し合いでスムーズな値上げを実現したことは成果の一つだろう。
だが、少子高齢化や地方の人口減で、これまでのように交流イベントを開くことは難しい。消費者の受け入れを担ってきたJAの組合員数は2023年の正・准組合員の総数(見通し)で1009万人と、前年より7万人減り、減少に歯止めがかからない。新たな方法を模索する必要がある。
JA京都中央会は4月、京都生協などと意見交換を開き、生協とJAの相互加入・事業利用を進め、協同組合間連携の強化を検討している。JAグループ福島は、11月に開いた第42回JA福島大会で決議した次期3カ年基本方針に、生協との連携を強め生協組合員をJA准組合員にする方針を盛り込んだ。25年度から展開する。食や農に関心の高い生協組合員の意見をJA運営に反映することが、地域農業の活性化につながる。
10月に開かれた第30回JA全国大会では、地域に根差した関係者との連携が引き続き取り組む課題となった。30年に向けてJAは多様な関係者と連携し、協同の力で地域共生社会を目指すとしており、消費者との結び付きをどう深化させるかが問われている。
生協などとの協同組合間連携は、その中でも大きな柱となるのは当然だろう。生協との連携をきっかけにして、消費者に価格の向こうにある農業の実態をどう理解してもらうかが重要だ。そのためには、「生産者と消費者」という関係性を超えて、同じ人間として、自分たちの食の未来に危機感を持ってもらうための発信が欠かせない。JAは生協との連携をさらに強め、食と農業、農村の応援団を増やす取り組みを進めよう。