[論説]防疫措置の人員確保 広域で支え合う態勢を
猛威を振るう鳥インフルは、昨年10月17日に北海道で国内1例目が確認されて以降、発生は14道県51事例に広がり約932万羽が殺処分の対象となっている。千葉県では過去最多の16例に上り、1月12日から2月1日にかけて、銚子市や旭市など近接した地域で集中発生、殺処分の対象は300万羽を超えた。
ウイルスの早期封じ込めには、防疫措置に携わる人員が必要となる。現場で作業に当たる県職員は延べ1万人を超え、自衛隊員も殺処分に当たる。多発している地域は、採卵鶏飼養羽数全国一の千葉県の中でも養鶏農家が密集しているだけに卵価高騰が長期化する恐れもある。一刻も早いまん延防止策が欠かせない。
県職員は連日、140人が4時間ごとに6交代制で、市町村、関係団体の協力を得ながら防疫措置を進める。だが、定数を満たせない状況が続いている。家畜伝染病予防法では、殺処分については「家畜防疫員の指示に従い、家畜の所有者が行う」としている。だが、実務は県職員が担う場合が多く、殺処分羽数が多くなるほど、心身ともに負担は大きい。
長期間に複数の農場の防疫措置を実施している状況では、職員の疲労は計り知れない。日常の業務にも遅れなどの支障が出ているという。熊谷知事は緊急事態を宣言、殺処分に当たる国家公務員の家畜防疫官の増員、県が対策に要した経費についての国庫補助率の引き上げなどを農水省に求めた。
さらに、鳥インフルの流行時期は、中国などの春節の時期と重なったため、バスの手配も難しかった。防疫に当たる人員は多く、着替えをする施設の確保などの課題も上がっている。現行の法制度がこれだけの大規模な鳥インフルの発生が相次ぐことを想定しているとは考えられず、短期間で集中的に被害が多発するケースでも対応できるよう、法改正を検討する時期にきている。民間を含め、防疫措置を強化する必要がある。
鳥インフルが発生した養鶏農家をはじめ、卵の取引先や運送業者など地域経済への損失は計り知れない。養鶏業を守るには、迅速な防疫措置は欠かせず、ウイルスを封じ込める十分な人員確保は不可欠だ。発生した都道府県の職員だけでなく広域で防疫に関わる支援態勢を構築し、食と農業を守る仕組みを整えたい。