[論説]国産愛用運動 食べて農業思う機運を
緑提灯の発案者は、元農研機構・中央農業総合研究センター所長の丸山清明さん(78)。札幌市に赴任当時、市内の居酒屋に立ち寄ったが地酒がなく、近所のスーパーにはチリ産のサケがずらり。「北海道は国内有数の食料基地なのに」と心を痛め、緑提灯運動を提唱した。現在、登録店舗は3802軒に上る。
提灯にある星の数が、国産食材の使用割合を表す。5割以上で一つ、以後1割増えるごとに追加する。星の数は自己申告だが、申告違反の場合は、頭を丸めるなどの罰則がある。国産を応援するこの運動は、店主らの信頼に支えられ、今も根付いている。
東京・新橋の「炉端焼うだつ」は1メートル以上ある巨大な緑提灯を18年前から掲げる。北海道産米や野菜、魚介類を中心に扱い国産を9割以上使う五つ星。国産を愛好する来店客から支持を得て、コロナ禍後も客足は途絶えない。
一方、近年では国産を使うことへの関心が薄れ、やむなく緑提灯を外したところもある。運動が始まった2005年度の食料自給率(カロリーベース)は40%だったが、23年度には38%と、ここ20年で2ポイント落ち込んだ。
今こそ、産地と食卓をつなぐJAグループの出番だ。JA全中は、「国消国産」推進に向けた25年度のJAグループ統一運動方針を決めた。「令和の米騒動」を発端として、主食の米に国民の関心が集まる中、生産現場の状況を正しく発信し、理解を促す必要がある。人気キャラクター「ハローキティ」を新たなPR役に起用し、若者など幅広い世代に理解を呼びかけるという。誰もが知っているキティちゃんの力を借りて、国産を選んで食べることで産地を応援する機運を盛り上げたい。
緑提灯や「国消国産」運動が各地に広がり、食を通して、農業現場で起きている危機に関心を抱く国民を増やしたい。そのためには、安ければ安いほどいい、という意識を変えていく必要がある。運動を続けることが食育となり、農家やJAが求める適正な価格形成につながっていく。
食料・農業・農村基本計画では、30年度までに食料自給率をカロリーベースで45%に引き上げる目標を掲げている。運動は苦しいと続かない。楽しみながら、国民を巻き込んだ運動に発展させたい。米への関心が高まる今こそ、食の国産回帰を進めよう。