[論説]水田政策の見直し 米は食料安保の根幹だ
政府は水田政策の見直し方針を新たな食料・農業・農村基本計画に盛り込んだ。制度の詳細は25年度中に固める。
目玉は、転作助成である「水田活用の直接支払交付金」(水活)の見直しだ。大きな転換の一つが、水活の「水張り」要件の撤廃だ。水田を対象とする現在の仕組みから、作物ごとの生産性向上を支援する仕組みにし、27年度以降は、田への水張りを不要とする。移行前の25、26年度についても、連作障害回避の取り組みを条件に、水を張らなくても交付する。
「水張り」を巡り、混乱や苦労を強いられてきた産地からは、今回の見直しを評価する声が上がる一方、「水張り」をしてきた農家や産地に、不公平感が募っていることも見落としてはならない。
同省が21年、「22~26年に1度も水張りされない農地は交付対象外」としたことで、「水張り」に取り組んだ農家は多い。ところが見直しによって水を張らなくても交付されることになり、公平性への配慮が求められる。
水田・畑地にかかわらず、作物ごとに支援する仕組みに変わることで、焦点は支援の水準となる。現行の「水活」では戦略作物助成として、麦・大豆・飼料作物を作付けた水田に10アール当たり3万5000円、発酵粗飼料(WCS)用稲に同8万円といった助成がある。政策の見直しで対象が水田以外にも広がれば、現行の助成単価を維持するには、予算の拡充が欠かせない。制度設計と並行し、予算確保の道筋も示す必要がある。
飼料用米の扱いも課題だ。財務省などは飼料用米への助成を何度もやり玉に挙げ、予算削減圧力を強める。農水省は見直し方針に「飼料用米中心の生産体系を見直し、青刈りトウモロコシなどの生産振興を図る」と明記した。
耕畜連携や、生協との連携が進む飼料用米生産の機運が衰退しかねない事態だ。水田機能の維持と、国産の濃厚飼料の増産を両立させる飼料用米の生産は、食料安保強化への根幹として強く位置付けるべきである。
米の価格が上昇し、政府備蓄米の放出が続く異例の状況の中、米への関心はかつてないほど高まっている。食料の安定供給にはどんな施策が必要か。新たな水田政策の制度設計を通じ、農家だけでなく国民各層に幅広く示す機会とすべきだ。