[論説]和歌山の梅にひょう害 産地存続へ買って応援
ひょうが降ったのは4月6、11、14、15日。膨らみ始めた小さな果実の表皮をえぐり、傷つけ、落果させた。被害面積は4300ヘクタールと全園地の9割に及び、被害額は約48億円に上った。一つの災害による県内の農作物被害としては過去10年間で最大となった。
産地は昨年も、ひょう害に加えて暖冬による着果不良で不作に苦しんだ。今年も開花後の天候不順でミツバチによる授粉が適切にできず、不作の恐れがある中、懸命な管理を進めていた直後だった。2年連続の災害となり、産地の打撃は計り知れない。県は、運転資金を無利子で融資する制度を知事特認で適用させたが、大幅な収入減は免れない。国を挙げた一層の支援を求めたい。収入保険制度の加入条件の緩和や、被災農家への新たな給付金の支給など、思い切った対策を求めたい。
梅は、ご飯に欠かせぬ日本伝統の農作物だ。疲労回復に効果的なクエン酸やビタミンなど、健康に寄与する成分を豊富に含む。梅干しにすれば長期保存が可能で、暑さを乗り切るには欠かせない。梅を味わえるのは、常に高品質・安定出荷を心がける産地があるからだ。ひょう害を受けても営農を続けていくためには、行政などの支援措置と合わせ、傷があろうと、形が不ぞろいであろうと、国民が適正な価格で“買い支え、食べ支える”ことが重要になる。
自然災害で傷が付いた農産物は、通常出荷が難しい。これまでも台風で落果したリンゴや大雪で折れたネギなど、産地のJAが規格外品となった理由を説明することで、消費者が納得して買い支える動きはあった。昨年は、ふるさと納税サイトを運営する「さとふる」が、猛暑で着色不良となったブドウや、害虫被害を受けた梨などの販売イベントを都内で開いたところ、産地に心を寄せ、積極的に購入する消費者が相次いだ。こうした取り組みは、気候変動が激しい中、農産物を作り続けることがいかに難しいか、産地の努力を学ぶ機会となる。和歌山の梅農家の今を発信し、応援する輪を広げたい。
5月末からは青梅の出荷が始まる。品薄で価格が高めになるかもしれない。見栄えが若干劣る規格外品が出回るかもしれない。だからこそ、みんなで買い支えよう。産地の未来は、生産者と消費者、双方に懸かっている。