[論説]国産牛肉の消費拡大 畜産の現状アピールを
同センターは、日本中央競馬会の助成を受け、食肉の家計消費動向と意識を調査し、2024年度の結果をまとめた。近年の物価高で、消費者の購買行動は大きく変化。豚肉、鶏肉は支出が伸びているが、牛肉は、コロナ禍の中食重視で伸びた支出が、21年以降は減り続けていることが明らかになった。
コロナ禍前の19年の平均を100とすると、牛肉の購入数量は24年6月で85・1、購入頻度は90・4と、買い控えが顕著に表れた。支出金額は100・5と、コロナ禍前の水準にとどまったが、これは物価高を受けて単価が高くなった影響とみていい。
豚肉も購入数量と頻度は減少しているが、減少の傾きは牛肉に比べて緩やか。支出金額は伸びて、底堅い需要に支えられていた。鶏肉は支出金額だけでなく購入数量、頻度ともに増えた。24年も、高価な牛肉から、より安価な鶏肉へと消費が流れた形だ。
一方、約170億円に上る和牛肉需要拡大緊急対策事業(24年度補正予算)の効果で、業者の調達意欲は強まってきた。同センターの24年の調査によると、これまで購入の少なかった地域・世代ではコロナ禍前より、支出は伸びている。牛肉の支出金額は西日本で多く、東日本で少ないが、今回の調査では支出が少なかった北陸、東海で増加。特に北海道では購入頻度も増え、消費の伸びが大きかった。
年代別では、もともと高齢層ほど支出額は多かったが、今回は20代で大きく増え、購入数量も増加。東日本、そして若い世代に、伸びしろを感じさせた。
輸入牛肉より高値の国産だが、調査では、国内畜産が置かれた現状を知ることで、多少高くても国産を受け入れやすくなる傾向が明らかになった。特に女性の方が寛容になる。肉牛農家の減少や、飼料の高騰といった実情をさらに周知することで、国産愛好者が増える可能性がある。
価格差の許容度は高齢者の方が高い傾向だったが、国内畜産の現状は、若い世代ほど「初めて知った」と答える人が多かった。消費に伸びしろのある若い世代を中心に、畜産の現状をアピールするのも、今後の消費拡大に有効だろう。この世代を狙ったPR戦略を検討したい。
外食の業務利用が多い牛肉だが、消費動向を分析し、中食、家庭需要を拡大しよう。