[論説]JAグループ政策提案 構造転換へ予算万全に
13日の緊急要請では、2020年1月に発効した日米貿易協定について、自動車の関税を引き上げない代わりに、農業分野で日本が譲歩した実態を指摘した。この前提を踏まえ農畜産物について、同協定の内容を超えた譲歩は一切行わないよう強く求めたい。
特に主食であり自給可能な米については、安価な輸入米で価格上昇に対応するのは安易な考えだ。輸入を拡大すれば「将来の食料安全保障に大きな禍根を残す」として緊急要請でくぎを刺した。非関税障壁として、交渉材料にされかねない動植物検疫の見直しや緩和なども、食品の安全・安心を損なうことになり、到底受け入れられない。
政府は4月、新たな食料・農業・農村基本計画の閣議決定を受け、25年度からの初動5年間を「農業構造転換集中対策期間」と位置付けたが、着実に実行してもらいたい。日本の農業を守ることは、食料の安定供給を国民に約束することだ。JAグループの政策提案では、農林水産関係予算総額の抜本的な拡大を要請した。集中対策期間に、一般予算とは別枠の思い切った額の確保を求めたい。
農林水産関係予算は、25年度は2兆2706億円と前年をわずかに上回り2年連続の増額となった。ただ、ピークの1982年度(3兆7010億円)の6割程度しかない。水田・畑作政策の見直しも、農業者が希望を持てるよう見直してほしい。水田の生産基盤を維持することは、洪水の防止や生物多様性などの保全につながり、農業、農村の持続的な発展に欠かせない。
カントリーエレベーターなど共同利用施設の更新、再編も迫っている。29年までに更新・再編を予定している施設数は、全国の共同利用施設の3割に当たる1636施設。現状では再編事業の要件として都道府県の支援がない場合、6割補助のうち1割が受けられない。政策提案ではこうした制限がない別次元の対策として、補助率の引き上げを求めている。
農業や国産農畜産物の振興へ、どれだけ現場の農家が汗をかこうとも、その努力が消費者まで伝わらなければ、適正な価格形成と国民理解の醸成は進まない。国産を選んで食べることが、日本の農家の応援につながるという機運を高めたい。将来を見据えた切実な提案を、今後の交渉や政策に生かすべきだ。