[論説]「母の日」のギフト 国産農産物に商機あり
「母の日」を象徴するギフトは花だ。各地区大手7卸のデータを集計する日農平均価格で切り花の主要15品目の動きは、4月は低迷していたが、「母の日」向けの仕入れがピーク入りした5月5日から平年を上回る水準に回復。手堅い需要を物語る。
日本フローラルマーケティング協会(JFMA)の花き需要動向を探るオンライン会議では、「母の日」に向けた消費者の購買は当日を含む3日間に集中するとの報告があった。花売り場の会計待ちの列は人気を示す目安だが、待ち時間が長過ぎると需要を取りこぼす恐れもある。
そこで小売りは、事前予約や並んでいる間のモバイル決済でレジ通過を早める工夫を打ち出している。日比谷花壇はクーポンを発行しお得感で事前決済を促す。観賞後の分別も考えて紙包装によるプラスチック削減も進む。花の魅力に加え、買いやすく、贈りやすくする提案が消費拡大には欠かせない。
サクランボなどの果実も定番商品だ。「母の日」のプレゼント候補として目にする機会が増えれば、贈る当人も欲しくなる。新潟県は、県のブランドイチゴ「越後姫」のPRで、大切な人への感謝の言葉と、「#母に贈る越後姫」のハッシュタグを付けて交流サイト(SNS)に投稿した人の中から、抽選で越後姫をプレゼントするキャンペーンを展開。心温まる感謝の言葉は、イチゴのイメージアップにもつながる。
今年は、贈答品として日常食の米が急浮上し話題となった。電子商取引(EC)モールの「母の日特集」売り上げランキングで米が一時、上位となり、花やスイーツが並ぶ中で異彩を放ったとの報道もあった。不足感で贈答用の価値も上がったといえる。
「母」にまつわるマーケットは今後、一層拡大する可能性がある。博報堂生活総合研究所の2024年の「若者調査」によると、母親の存在感が大きくなっていることが分かった。「尊敬する点が一番多い相手」は、「母親」が30年前に比べて15ポイント増えて43%となり、「父親」(34%)を逆転した。母親と共通の趣味がある若者は51%で同21ポイント増加。父親と共通の趣味がある割合の42%を上回る。
母と子で楽しむ体験型商品のニーズは今後も高まるとみられる。食や、農業体験のギフト需要は開拓の余地がある。