[論説]24年度農業白書 基本計画実現へ周知を
4月に閣議決定した新しい基本計画は、改正食料・農業・農村基本法の実現に向けたもので、約30項目の目標を掲げた。焦点の食料自給率の目標は、カロリーベースで現行と同じ45%とした。
着実な実現に向け白書は、目標達成への指標(重要業績評価指標=KPI)を設定して、年1回は達成状況を検証し、施策の見直しを行うと解説した。目標を「形骸化」させてはならない。
日本農業は、農業者の減少で生産基盤が弱体化している。農水省の見通しでは、減少はさらに続く。基本計画は、49歳以下の担い手の目標を現状維持の4・8万人としたが、十分ではない。農業は多様な担い手で成り立つ。その目標も欲しいが、白書が多様な担い手の重要性に言及したことは、評価できる。
また特集では、合理的な価格形成に向けた取り組みやスマート農業技術の活用も紹介した。いずれも農業振興には欠かせない重要なもので、広く国民に知ってもらおうとの積極的な姿勢がうかがえる。
ただ、スーパーの棚から米が消えるという「令和の米騒動」や、その後の米価上昇、政府備蓄米の放出など、米政策の根幹を揺るがす事態を、1ページの「コラム」にとどめたことには、疑問が残る。
供給は潤沢だと言っていたにもかかわらず、政府備蓄米の放出に至った経過をしっかり検証して記録し、主食の安定した生産と流通の在り方につなげなければならない。それこそ食料安保に関わる。
白書は、農林水産物・食品の輸出促進を、初めて「章立て」した。人口減による需要減の中では、輸出は国内生産の維持・拡大にもつながり、食料自給率を引き上げる効果もある。「章立て」は、期待の大きさを示すものだ。
一方で、農政の「車の両輪」に位置付けられる、農村政策に対する記述は新味に欠ける。急激な高齢化と人口減少に苦しむ農村の窮状を広く国民に明らかにし、その振興策の必要性を大胆に示してもよかった。
基本計画実現への最大の課題は財源だろう。2025年度の農林水産予算は前年度比0・1%増にとどまった。政府は、これから5年間を構造改革の集中期間として、水田政策も抜本改革を目指す方針だ。従来予算の組み替えでは、基本計画に掲げた目標の達成は難しい。農水省はあらゆる手段で、そのことをもっと国民に説明すべきだ。