石破茂首相が学給無償化する方針を明らかにしたのは2月。同3党の国会議員が検討チームを発足し、6月の「経済財政運営と改革の基本方針」(骨太方針)発表までに法制度の案をまとめるとした。ところが、骨太方針が閣議決定された13日までに間に合わず、11日の非公開会合で「概算要求(8月)までに」作るとの方針を確認するにとどまった=公式ウェブサイトに写真。「全国の自治体から具体的な内容を示すよう求められているが、課題は複雑で、議論の時間がない」(検討チームのメンバー)ためという。
文部科学省の23年調査によると、全国約1740の市区町村のうち3割は、独自予算や交付金で無償化している。だが、学校給食法は、給食費は保護者負担が原則で、さまざまな矛盾が生じている。
日本農業新聞による全国調査では、記録的な米価上昇を受け、都道府県の学校給食会から各自治体へ売り渡される今年度の給食用米価が、前年度と比べて最大2倍も上がり過去最高額となった。
だが、多くの自治体は保護者の負担増となる給食費値上げをためらい、米飯給食の回数やおかず、デザートの質や量を減らすなど苦肉の策をとる。福岡市で4月に登場した、おかずが「唐揚げ1個」という給食献立はその一例だ。
国は臨時交付金の活用を呼びかけたが、交付金の目的は給食だけでなく、年度ごとの応急措置にすぎず、しわ寄せは子どもに来ている。
国による無償化は、給食の食材に地場産を積極活用する地域独自の工夫や、広がり始めた有機米をはじめとする環境保全型農業を後退させない制度設計が欠かせない。給食を通して、地域の環境や農業の未来について考える機会につなげたい。
来年度から全国の公立小学校で始まる給食無償化は、戦後から続いてきた学給制度の土台を変える歴史的な転換点となる。それだけに、複雑に絡んだ課題を丁寧に解決しつつ、スピード感を持って対処しなければならない。
学校給食は、児童生徒の食育と心身の健全な成長を支えるだけでなく、農産物の生産から流通、調理、配送などすそ野は広大だ。保護者を含め、関係者の関心は高く、検討過程は公開すべきだ。子どもたちの未来のために、この国の本気度が問われている。子どもたちは見ている。
