浪江町・前田拓実さん

父親の勧めで矢吹町の農業短期大学に進学。水田経営学科を専攻し、在学中に大型特殊やけん引免許などを取得した。2021年に親元就農し、昨年、事業承継して約17ヘクタールの圃場(ほじょう)で水稲栽培を手がける。
「コシヒカリ」以外は作業効率の良い直播(ちょくは)栽培に取り組み、自動アシストトラクターを使用している。今後は20ヘクタールまで面積を拡大する計画で、スマート農業の活用も視野に入れ、栽培管理支援システム「ザルビオ」やドローンの導入を検討している。
「今はまだ父の築いた事業基盤で栽培に取り組んでいるが、今後は父に頼らず経営していきたい」。決意を宿した温かいまなざしを真っすぐ、田んぼに向けた。
喜多方市・日下健吾さん

実家の経営する繁殖農家の世界へ飛び込んだのは2021年。就農前は介護の仕事をしていた。「親牛の知識もなく、JAや繁殖農家の先輩たちに聞いて勉強する毎日だった」と当時を振り返る。
経験を積んだ今は「牛の個性に合わせて一頭一頭、手のかけ方も工夫している」と話す。昨年7月の2024年度JAグループ福島肉用牛共進会では、出品牛が農林水産畜産局長賞を受賞。日々の努力が実を結んだ。
繁殖農家13人で構成する「會津(あいづ)黒べこ推進グループ」を会長としてリードする。牛の体格や健康状態の確認方法、共進会に向けた調教の仕方を研修するなど会員同士でレベルアップを図る。
「共進会は繁殖農家が輝ける場所。自分が全共出場を目指すことで、繁殖農家をやりたいという人が増えるとうれしい。家畜人工授精師の資格も取得したい」とさらに前へ、確かな歩みを進める。
鮫川村・清水大翼さん

「地元で何かをしたい」。漠然と古里への思いを胸に抱いていた清水さんが、大学時代の牧場研修で出合ったのは酪農。「これだ」と就農を決意した。大学を卒業後、北海道で2年の実習を経て24歳で地元に帰ってきた。2017年にはNPO「明日飛(あすび)子ども自立の里」の酪農部門から独立。「ファームつばさ」を経営している。
牛の飼育は「食べる」「寝る」「運動する」に対してストレスのない環境づくりを重視。高原で伸び伸び育ったジャージー牛の牛乳は高脂肪で質が良く、その牛乳を100%使用した「ミルクアイスバー」や生乳だけを使用した「ソフトクリームミックス」をスーパーや直売所で販売している。「濃厚なのに、後味はさっぱり」と評判だ。
目標は牧場での体験活動受け入れ。「生産者と消費者が触れ合い、理解を深める場にしたい」と夢を広げる。「地元で続いてきた農家の姿を残したい」と昨年から和牛繁殖にも挑戦。村の役に立てるよう耕作放棄地の利用も視野に入れている。
石川町・高木俊希さん

石川町の高木俊希さん(34)は高校、大学と農業を学び、22歳で就農。現在はリスク分散のため1年を通して農作物を収穫できるように水稲、ブロッコリー、トマト、ニラを家族と共に栽培している。
昨年の秋ブロッコリーは夏の高温と定植時の長雨により栽培が思うようにいかず、苦労した。それでも落ち込む暇はない。ニラの収穫を控え生育管理に追われる。
近年の異常気象では、栽培する作物それぞれで異なる対応を迫られる。収量の維持、拡大を目指して、地道に試行錯誤を繰り返す。後継者不足が深刻化する中、若手として地域農業をけん引していく頼もしい存在だ。
長く農業を続けるには健康が第一だと実感している。「体が資本の仕事」という言葉に汗を流す農家の誇りがにじむ。
さらに良質でおいしい農産物生産を目指す日々が続く。白米が大好きな息子と、好き嫌いなく食べる娘のためにも。
国見町・阿部郁さん

父親と農業を営む阿部さんが手がける農産物は桃やリンゴ、水稲など多岐にわたる。とりわけ伝統あるあんぽ柿への情熱が、阿部さんを突き動かす。
高齢化が進む現状を見据え、後継者を増やすために地域おこし協力隊と力を合わせてあんぽ柿のPR活動を続けている。「認知度向上には若い人の力が必要不可欠。まずは若い世代に食べてもらいたい」。あんぽ柿を語ると口調が熱くなる。
雇用を含めた栽培規模の拡大が当面の目標だ。あんぽ柿生産を一緒に盛り上げてくれる人材を求め、行政やJAのイベントには積極的に参加している。
あんぽ柿生産で特に気を付けているのは収穫のタイミングとカビ対策。天候次第で管理方法の変化が求められるあんぽ柿にとって、干し場の管理は気を抜けない重要な作業だ。高品質な「伊達のあんぽ柿」を守り、さらに高めるための挑戦は続く。