両手にダイコンを握り、独特の歌と踊りでスポーツの試合を応援する「青山ほとり(通称・大根踊り)」で知られる東京農業大学の応援団リーダー部は、来年1月2、3日に開かれる第100回東京箱根間往復大学駅伝競走の現地で「大根踊り」を実演する。「全ては選手のために」。10年ぶりの箱根駅伝本戦に臨む陸上競技部の快走を後押ししようと、練習中から声を張り上げ、全力で踊り続ける。
腹筋運動からダッシュ。スクワットからダッシュ。体力トレーニングの最中、両手にあるのは水を入れたペットボトル。ダイコンを握って歌い踊る本番を見据えたリーダー部の練習法だ。
ハードな練習を3時間近く続ける中、先輩が「頑張れ」と声をかける。「押忍」。力強い返事がすかさず返ってくる。
リーダー部長で同大4年の加藤俊弥さん(22)は「団員同士で応援できなければ選手も応援できない」とチームワークを重視する。
リーダー部には現在男女14人が所属。本戦の応援時は、羽織はかまや黒い詰襟制服に身を包み、チアリーダー部や吹奏楽部らと共に「全学応援団」として臨む。全学応援団長も務める加藤さんは「主役は選手。いい順位でゴールできるよう気合いを入れて準備したい」と意気込む
本番は駅伝ゴール地点で鼓舞
これまで本戦のレース終盤には、往路は箱根・芦ノ湖の、復路は東京・大手町のゴール地点で同大選手が来るまで「大根踊り」を止めず続けてきた。
10年ぶりの本戦応援に備え、かつて本戦での応援経験があるOBが「体力をしっかり鍛えておく必要があるぞ」と助言。リーダー部の練習も現在は体力強化に重点を置く。
本戦当日の「大根踊り」で使うダイコンは応援団OBの農家からの提供に加え、今年は学生らも栽培している。

振り付けは戦後生まれ
♪お米の実る木は知りゃすまい
♪人間喰わずに生きらりょか
ユニークな歌詞が並ぶ「青山ほとり」は4番まであり、農業や食の大切さを伝える言葉も多く出てくる。同大によると、1923年に当時の学生が作詞したという記録がある。
ダイコンを手にして歌い踊る今の形は52年、東京・渋谷ハチ公前の「収穫祭宣伝パレード」で披露された。戦後の暗い時代、「ユーモアを復活させたい」「ダイコンを持って踊ったら誰もが笑うはず」と考えたのがきっかけという。以来、スポーツの応援でも披露されるようになった。
「青山ほとり」の名前は、かつて同大のキャンパスが東京都渋谷区の青山学院大学の一部にあったことに由来する。