和紅茶を気軽に
静岡市清水区のグリーンエイトカフェ。茶農家8戸で立ち上げた農業法人、グリーンエイトのカフェ兼直売店だ。JR清水駅から車で20分ほど離れた中山間地の両河内地区に位置する。
茶工場の一角を改装した店舗は、古民家の廃木材を使った手作りの温かみのある雰囲気で、ほっとする空気が漂う。茶畑テラスも整えた。ドリンクメニューは、両河内特産の浅蒸し茶をはじめ、和紅茶やほうじ茶、深蒸し茶など10種類ほど。

老若男女が来店
当初は、和紅茶の珍しさが新聞やテレビで取り上げられた。カフェの雰囲気や提供するドリンクの魅力が伝わり、来店した客がリピーターになった。
インスタグラムやX(旧ツイッター)で積極的に情報発信をする。カフェのメニューだけでなく、その時々の畑や茶工場の様子も紹介。カフェと茶の両方に関心を持ってもらうようにした。今では年間3000人が訪れる人気店となった。若者から高齢者、外国人ら、年代や人種に偏りなく来店している。
客の増加に合わせて和紅茶だけでなく、緑茶も売れるようになったという。北條さんは「若者は茶を知らない。興味を持っていない。しかし、消費者と緑茶との接点をつくり、味わってもらえば、魅力は伝わるはずだ」と強調する。
茶畑からも発信
カフェに客として訪れていた、茶商マルヒデ岩崎製茶の平野大介さん(49)は「このカフェの魅力は、茶のおいしさだけでなく、北條さんが茶農家として消費者に茶を伝える熱意だ」と話す。
このカフェに来店した若い人のほとんどが、初めて茶畑を見る。若い世代は、茶がどのように育っているのか、どうやって製茶されているのかを知ることができる。北條さんは、このカフェを通じた消費者と緑茶を結び付ける役割を担う。

海外ブームの影響か、茶のスイーツがテレビで紹介されることも増えてきた。「今がチャンスだ」と北條さんは助言する。
<取材後記>
仕事外で、日本茶カフェを訪れるようになった。名古屋市で三重県の伊勢茶を専門に売る日本茶カフェでは、カフェスペースは満員。茶の直売スペースにも人がたくさんいた。外国人も多く、店員はスマホを使ってスムーズに試飲を勧めていた。
その他にも、愛知県のカフェには人が多過ぎて入れなかったり、岐阜県では子ども連れの家族やカップルが茶を楽しんでいたりするのを見た。茶のスイーツが目当ての人は多いが、土産で緑茶を買って帰る人も少なくない。
入り口が和紅茶やスイーツであっても、そこにおいしい緑茶や茶畑の風景など、緑茶の魅力を知る機会があれば、若い世代でも緑茶に興味を持つ。若い世代は、まだおいしい緑茶を知らない。緑茶とのきっかけづくりが必要だ。
