全国の20~60代の消費者に6月中旬、米の消費動向を尋ねるウェブアンケートを行った。各年代約110人ずつ、合計552人から回答を得た。
若年層で割合高く
まず、「米を食べる量が前年同時期と比べて増えたか」を聞いたところ、「増えた」が26%(114人)に対し、「減った」が11%(60人)。「増えた」と答えた人数は「減った」を上回り、米消費が増加に転じた兆しが見られた。最多は「変わらない」で63%(348人)だった。
続いて、年代別に「増えた」と回答した人の割合を見た。すると、30代では37%の人が「増えた」と回答しており、最も割合が大きかった。20代(35%)が僅差で続き、40代(24%)、50代(18%)、60代(17%)の順となった。全ての年代で「増えた」が「減った」を上回ったものの、全体で「増えた」と回答した人の半分以上を20、30代が占め、若年層を中心に消費が増えていることが分かった。
「自宅」「弁当」多く
米を食べる量を増やしている人が多いのは、なぜなのか。アンケート結果を見ると、節約志向の高まりが一つの要因として浮かび上がった。
「米を食べる量が増えた理由」(複数回答)について聞くと、「腹持ちがいいから」が24%(132人)で、米の経済性の高さを支持する声があった。「他の食品に比べて値頃だから」も11%(61人)と一定数を占めた。
「米を食べる量が増えた場面」(複数回答)では、「自宅での食事」が50%(275人)と最も高く、「自宅から持っていく弁当」が21%(114人)が続いた。
「代わりに食べる量が減ったもの」では、他の主食となる「パン類」が30%(167人)、麺類が22%(119人)と高かった。近年、小麦製品は値上げが相次いでいる。その他、嗜好(しこう)性が高い「お菓子類」が15%(81人)、「外食や総菜」が13%(70人)と続き、比較的高単価の商品の購入を抑えて米の消費を増やす動きも見られた。
ただ、「米を食べる量が増えた理由」で最多は、「おいしいから」の36%(197人)だった。若年層ほど回答割合が高く、20代では半数近くを占める結果となった。「健康的だから」も22%(121人)と高い支持を集めており、グルテンフリーといった流行に敏感な20代や、40、50代で多かった。
食味や健康といった米の特長や価値が高く評価されており、米の消費増につながっていることが分かった。
値上げに抵抗感
一方、米の値上げについては20%が「許容できない」とした。「5%高まで」が21%(116人)、「10%高まで」が31%(172人)となり、計72%が1割超の値上げは受け入れられないとしている。
消費者が将来も安定的に米を購入できるよう、持続可能な稲作を実現する必要がある。そのためには、農家が再生産や将来への投資ができるような水準まで米価を向上させる必要がある。米の注目度が高まっている今こそ、「消費者理解の増進に向けた情報発信が重要」(産地関係者)となっている。
消費者の米離れが叫ばれ続けてきた中で、1人当たりの消費量が下げ止まったどころか、増加に転じた可能性も出てきた。米業界にとっては朗報と思われ、記者個人としてもうれしい結果となった。
一方、産地の課題は山積みだ。高止まりする生産コストの価格転嫁は道半ばで、現状の米価は長期的に再生産が可能な水準とは言いにくい。後継者不足が深刻化する中、主産県のJA関係者は「とてもじゃないが、若い世代に稲作経営を継いでくれとは言えない」とこぼす。
米の注目度が高まっている今こそ、生産・流通・消費の三方良しの将来像を改めて描くべきだと感じた。