「ファン付き作業着は便利だが、果樹が密植していると葉や枝を巻き込む。ファンなしで涼しいウエアがあるといい」。熊本県天草市でかんきつ「不知火」など2・4ヘクタールを手がける農家の川田大志郎さん(35)は話す。同地域は7、8月に早場米を収穫し、作業時は暑さが厳しいため「長時間、しっかりと冷える製品もほしい」という。
水だけで冷やす

スリーライク(茨城県龍ケ崎市)が紹介した、バッテリーや保冷材を使わず水だけで体感温度を5~15度下げられる冷却ベストだ。
気化冷却を使った独自システムで、水を最大500ミリリットルを注ぐと最長72時間効果がある。「そのまま着ても涼しく、ファン付き作業着のインナーにも使える」(同社)。
首に狙って冷気

血流が集中する首を狙って冷やす。水冷式で外気温が高くても一気に冷える。過酷な暑さの中で作業する鉄鋼業界などで好評という。
説明したウエアラブル事業部の石井直輝さんは、妻の実家が山梨県笛吹市でブドウ「シャインマスカット」や「巨峰」を手がける農家。「摘粒など、夏場の作業などで活躍している」と話す。
弱中強の3段階あり、「中」なら平均4時間使える。石井さんは、農作業を手伝うとき、昼の休憩時にバッテリーを取り換えて長時間活用する。暖房機能もあるため、冬場も着けているという。
見た目との両立

同社の担当者は、架空の運送会社がコンセプトのブランド・フレッシュサービスとコラボした半袖の電動ファン付きウエアを着て参加。「オーバーサイズでおしゃれに着られる」と話す。
<取材後記>
消防庁によると、6月23日までに全国の熱中症で救急搬送された人数は7765人。世界気象機関(WMO)が「観測史上最も暑い年だった」とする、2023年とほぼ同じペースだ。
気象庁の予報でも、全国的に向こう3カ月の平均気温は平年よりも高くなる見通しだ。万全の対策をとって、1件でも熱中症による事故を減らしてほしい。
今回、若手農家に暑さ対策グッズの使い心地を尋ねてみたところ「枝を巻き込むので果樹園地で使えない」など、全く想像できなかった生の声が返ってきた。現場で使いやすい製品が増えるよう、農家の求める情報を発信していきたい。
(小林千哲)
