「自校調理」ならではの楽しみがある。神奈川県川崎市の玄関口、JR川崎駅から歩いてすぐの距離にある南河原小学校は、ダイコンを1~6年生464人全員で種から育て、収穫し、学校内の調理場で給食のおかずにしてもらう。校庭にある縦30メートル、横2・5メートルの花壇を畑に変え、今年で30年を迎えた。
「早く大きくなあれ」。ダイコンの種をまいた児童が言った(神奈川県川崎市で)
3日朝、登校した児童が1時間目を前に校庭に集まった。学年縦割りで15人ずつ30班に分かれ、班ごとに上級生が下級生に種を4粒ずつ手渡した。6年の岩田悠汰君が「畑に指先で穴を明け、2粒ずつ植えてください」と説明し、1年生にも分かるように同級生と作成したという植え方のイラストを示した。
今となっては、なぜ給食用のダイコンを自給しようとなったのか定かな記録は残っていない。小笠原利弘教頭は「30年前は校歌にも登場するほど工場が立ち並ぶ地域でしたが、農業と関わりながら暮らす人も多く、子どもたちの収穫体験などを支えてくれたことと関係があるのかもしれません」と語る。
種の植え方をイラストで紹介する6年生。「低学年でも分かるように工夫しました」(同)
校庭のあちこちにミカン、柿、梨、梅、ブドウ、キウイ、茶の木が残るのもその名残のようで、歴代の在校生たちは給食以外でも地域の人々と季節の実りを楽しんできた。しかし、そんな人たちも年を重ね、頼れなってきたという。
記録的な暑さが続いた昨秋は、ダイコンの葉や茎に大量のアブラムシがわき、吸汁された。6年生が安全な駆除方法を自力で探したが有効な方法は分からず、ダイコンが太る前に全滅してしまった。
今年の種植えが終わった。2年の福岡寿真君が「うまく植えられた」とうれしそうだ。子どもたちは2年ぶりの収穫を目指し、曜日ごとにジョウロで水をまく当番を決めた。
収穫は12月上旬の予定で、食育委員会が全校児童にどんなメニュにしてもらいたいかをアンケートし、栄養士が献立にする。例年人気なのは「ダイコンたっぷり煮込みうどん」。
今年こそはおいしく実るといいね--。