1年間続いたエルニーニョ現象が終息した6月、過去の動向からラ現象が年内に発生する見通しが広がり、各国・国際機関が予測を開始した。両現象は世界中の気象を左右してきたためだ。
気象庁は10日、ラ現象の監視速報を更新し、10月~来年2月までの発生確率を60%と発表。「ラ現象時の特徴に近づきつつあり、これから明瞭になっていく」と予測した。
世界気象機関(WMO)は、9月時点の予測として11月までの発生を55%、10~来年2月を60%と予測。米国立気象局(NWS)は11月までの発生確率を71%としている。
各機関で値が異なるのは、それぞれが発生定義を持つため。気象庁は、太平洋東部赤道域の海面水温について30年間の各月平均値との差を基準に、前後2カ月間の平均値が半年以上続けてマイナス0・5度以下になった場合と規定する。
ただ、他機関も発生する方が発生しない確率よりも高く、傾向は大同小異と言える。
戦後は1949年秋以降計17回発生し、全てが冬をはさんだ。直近は2021年秋から23年冬まで続き、22年12月に全国で記録的な大雪が降った。新潟県柏崎市で1000台近い車両が雪で立往生した他、高知市でも観測史上1位となる積雪が観測された。
ラ現象発生で、今冬も厳しくなるのか。各地で観測史上最高気温を塗り替えた今夏は、気候変動の影響とされ、気象庁は11月頃まで平年を2度程上回る暑さが続くとみる。NWSも、10~12月の気温について、地球温暖化を背景にアラスカ北西部を含む米国本土の大半で平年を上回るとの見解だ。気象庁担当者も「ラ現象の影響は小さく、短期で終わる可能性」を示す。
日本を冷夏にしてきたエルニーニョ現象下の23年夏は、正反対の猛暑となった。欧州連合(EU)の気象情報機関は、今年の世界平均気温が過去最高になると予測。パリ協定の目標達成は困難と見通した。ラ現象の「定説」も通用しない可能性が高い。
(栗田慎一)
〈ことば〉ラニーニャ現象 太平洋赤道域の日付変更線付近から南米沿岸にかけて、海面水温が平年より低くなり1年程度続く現象。スペイン語で「神の子」を意味するエルニーニョの反対現象として「アンチ・エルニーニョ」と呼ばれていたが、米国の海洋学者が40年前に「語感が悪い」と「女子」を指すラニーニャを提唱し、定着した。
「氷点下0・5度以下になった場合」とあったのは「マイナス0・5度以下になった場合」の誤りでした。