オーガニック給食の日は、町が有機農業の取り組みを知ってもらおうと、今年6月に始めた。米や野菜は全て有機栽培されたものを使っている。
この日の献立は、ご飯、豆腐ハンバーグ、吉賀野菜のゆかりあえ、旬の野菜を使った卵スープ。有機栽培と給食への食材供給に取り組む町の生産者グループ「食と農・かきのきむら企業組合」らが、小中学校にダイコンやキャベツなど計9品目95キロを提供した。

町立柿木小学校では、同グループメンバーで70代中心の生産農家5人が各教室に分かれ給食を食べた。5、6年生の児童12人と机を並べた田村政子さん(72)が「ダイコンを800本育てているよ」と言うと、児童は「えー!」と驚き、どんどん質問をした。5年の中野麻子さん(11)は「給食はいつもおいしいけど、きょうはめっちゃ食べられる」。
町によると、柿木地区(旧柿木村)では、有機農業運動が始まったばかりの1980年ごろから、一部の住民が有機農業を始めた。10年後の91年、村は人口減対策の一環として村づくりの方針に有機農業を掲げた。当時、認知度が低かった有機農業を行政の施策とすることは珍しかった。
村は翌92年、西日本では一早く学校給食に有機栽培米を使い始めた。2003年には広島県に村のアンテナショップをオープン。生産者らが独自に決めた規格で、有機野菜を販売するようになった。
この日、児童と給食を食べた福原圧史さん(75)は、「給食は市場と違って価格が変動せず、年間通して収入を確保できるから安心」と話す。町産業課によると、有機栽培面積は耕地面積の約12%で、22年度の給食で有機野菜を使った割合は8%。後継者がいる農家は半数に満たず、町は3年前から担い手を確保するため助成金を上乗せするなど独自の事業を展開している。
(糸井里未)
