【新潟・魚沼】十日町市の農業法人「women farmers Japan(ウーマンファーマーズジャパン)(株)」が、日本デザイン振興会の「2024グッドデザイン・ベスト100」に選ばれた。家長の男性主体となる家族経営が多い農業で、女性の農家がコミュニティーの力で成長し合い、加工施設の建設を通じて自己実現を果たす仕組みが評価された。
同賞は「2024年度グッドデザイン賞」受賞対象の中で、審美性、提案性、可能性などが高く評価された100件に贈られる。今年の応募総数は5773件で同賞の受賞1579件から選ばれた。
同社は20年に、同市の米農家で飲食店を経営する福嶋恭子さん(61)が設立した。女性の農業経営者として、自分らしい暮らしの実現を目指す。
設立の背景には、育児や家事に悩み、家長制の中で弱い立場に置かれ活躍できる環境が少ない、女性農業者の課題解決があった。
活躍の場所、仲間と築く
福嶋さん自身「30年前から変わらない」と感じていた環境を変えようと、農産加工設備を共同利用できる場所をつくるプランを19年に提案。クラウドファンディングで多くの共感を得て、同市でサツマイモを栽培し加工所の建設を計画していた佐藤可奈子さん(37)と「共同食品加工所wofa(ウーファ)キッチン」を建設。福嶋さんと佐藤さんが共同代表を務める。
サツマイモ畑60アールを耕し、干し芋、スイーツ、パンなどの商品開発や販売のノウハウを共有する。関東のフードイベントでも積極的にPR販売。22年には加工所の一部を貸し出す「チャレンジ加工室」をオープン。施設を有料で貸し出し、仲間の輪を広げている。
福嶋さんは「若手の女性農業者を支援したい気持ちで仲間とやってきた。今後も農業を通じて、女性や中山間地域農業の課題を解決したい」と話した。
審査委員は同社の取り組みを「戦わず、助け合いながら無理なく自立する道を開いている」とみる。「保守的になりがちなローカルでこそ説得力を持つ活動は、他の地域・業種にもみられる共通課題に光を当てる予感がする」と講評した。